2008年10月26日日曜日

タイとアンコールにて(1)

今年はバンコクの大学の仕事のスケジュールが2ヶ月ずれたので、「仕事期間」は11月末まで続きます。例年でしたらそろそろインドに帰る時期です。インドも雨季が終わり、「ディワリ(ヒンドゥーの祭り)」が祝われる頃です。


1)アジアの利点

今年はタイ組対象の大学での仕事の日程を調整しながら、10月・11月に日本組対象の合宿セミナーを3つ消化しています。2つはグループ研修で、1つは一般公募された公開プログラムです。


タイでの仕事が安定して来た2004年から、こちらの「リトリート・センター」や「アシュラム」で日本の方を対象とした「ヨーガ」の合宿セミナーを実施して来ていますが、「ヨーガ」の活動の運営でも「アジア」の利点は大きいと思います。

「ヨーガ」のように、わたしたちのライフスタイルや生活習慣に関係して来る科目は、合宿セミナーで集中的に練習したり、テーマを絞って学習すると効率が抜群に良いものです。

また、からだとこころの両面に作用するものですから、学ぶ「環境」が結果を大きく左右します。日常生活の延長で、都会のビルの中で練習したり学習しているだけでは、体験的な理解に限界が出て来ます。

そのため「ヨーガ」の場合、自然環境に恵まれた立地にある「リトリート・センター」や「セミナー・ハウス」での合宿に定期的に参加することは、「内なる自然との調和」という「ヨーガ」的なテーマを深化させるのに非常に有利に作用します。
   
インドでは、「ヨーガ」を学ぶためには「研究所」や「アシュラム」での泊まり込みのコースに参加することが原則です。朝から晩まで「ヨーガ」的な環境に自分を浸すことで、「ヨーガ」というものへの体験的理解を深めることが重視されます。

日本の場合、なかなか長い休暇の取れない勤務形態ですし、自然と調和した立地環境で、利用コストの掛からない非営利運営の「リトリート・センター」が少ない、という制約があります。

また、日本の場合、「ヨーガ」に興味を持つ人々はまだまだ「少数派」ですから、「ヨーガの合宿セミナーに参加する」と言っても、必ずしも回りから肯定的な理解を得れない、という社会的な雰囲気もあると思います。

ですから、「ヨーガ」の合宿セミナーには、タイまで出かけるのが絶対的に有利です。「アジア」環境の利点が最大限活用されますし、アジアの国々の文化や社会への見聞も広まります。直接・間接的にそれらの国々への社会貢献をするチャンスもあります。

タイでしたら、1週間以内の日程で収まります。忙しい日本社会でも1週間の休暇はやり繰り出来ますし、日本と距離的にも文化的にも近いので、日本のひとにとっては異文化的なストレスや摩擦が少ない環境です。

今年のタイでの「合宿セミナー」の受付は終わりましたが、来年もバンコクでの「仕事期間」中に日本の方を対象とした「合宿セミナー」を企画する予定ですので、興味のある方は、どうぞお問い合わせ下さい。来年の「夏合宿」の先行予約もお受けします。

2)『パナ・ソム(森のアシュラム)』と『アンコール』探訪

10月11日(土)から17日(金)までの1週間、関西からタイに来られたグループ(8名)の研修プログラムが実施されました。10月13日(月)の「体育の日」の休日を利用した日程です。

  
・4泊5日のバンコク郊外の『パナ・ソム』での「ヨーガ」合宿セミナー
・2泊3日のカンボジアの『アンコール』探訪
を組み合わせたもので、「ヨーガとアジアの精神性」をテーマとした6泊7日のタイ・カンボジアでの研修プログラムでした。
      
「ヨーガ」はインドの伝統的なリソースを押さえたら、その次の展開は広い意味での「精神性」に関連した「文化・伝統・歴史」の展望に進むのが正しい方向性です。

ロナウラの『カイヴァリヤダーマ研究所』の創始者の「クヴァラヤーナンダ」もそのように構想していました。1950年に開設した付属カレッジには「Yoga & Cultural Synthesis(ヨーガと文化の統合)」という名称を付けています。彼は学生が「ヨーガ」をベースにして、人類の多様な精神文化の伝統への理解と洞察を深めていくことを期待していました。
     
今後も今回の「タイ&アンコール研修」のように、タイでの「ヨーガ」の合宿セミナーと組み合わせて、アジアの歴史的・精神的スポットを探訪する『アジアの精神性とヨーガ』の企画も進めて行く予定です。
   
次が探訪スポットの候補地です。どこもバンコクからのアクセスが便利なところです。 
・カンボジアのアンコール
・タイのスコータイ 
・ラオスのルアンパバーン 
・ミャンマーのパガン 
・ベトナムのフエ・ダナン 
etc. 
   
タイの隣国カンボジアのシェムリアップ郊外には、9世紀から15世紀にかけて展開した「クメール帝国・アンコール王朝」の遺跡群があります。

東南アジアの覇者として君臨し、栄華を極めた後、突如、熱帯の深い森に消えた「クメール帝国」の中心部に展開している「ヒンドゥー/仏教文明」は19世紀の後半にフランス人の博物学者によって再発見され、その偉大で不可思議な存在が世界に知られることになりました。

現在「世界文化遺産」に指定されていますが、中世の「ヒンドゥー/仏教文明」の遺跡としては、ともかく桁外れなところです。

熱帯の密林の中に、かって人口50万ー100万と言われた都市国家が繁栄し、膨大な数の寺院建築群が残された、というのは壮大な歴史のロマンですね。

本家のインドではイスラム勢力が破壊したので、北インドでは「アンコール」のような規模の壮大な寺院遺跡が残っていない、という事情があります。その意味では、ある意味「アンコール」はインドよりインドらしい、という不思議なところです。

昨年シェムリアップにモダンな国立博物館が開設され、効率よく歴代のアンコール王朝の歴史と考古学的な研究成果が把握できるようになっています。1000体の仏像も安置されています。
http://www.angkornationalmuseum.com/

「アンコール」はインド文明全般や「ヒンドゥー教・仏教」の宗教文化に興味のある人には、非常に魅力的なところです。インドの「精神文化」に対する見方を重層的・多角的にしてくれるところです。

現代インドにはかっての「仏教文明」の栄光を推し量る材料は乏しいですし、現代インドのヒンドゥー教を見ているだけでは、「ヒンドゥー文明」の奥行きとスケールはわからないだろう、と、「アンコール」を見ると考えさせられます。

「仏教」と「ヒンドゥー教」の関係を考える場合にも、「アンコール」にはものすごい素材があります。

「アンコールは「インド哲学」のフィールドワークに最適の場所です。また、人類と地球環境、文明と自然、自然と人間の共生といった、現代のエコロジー的なテーマへの洞察を深めるにも、最適な場所でしょう。
   
特に「ヨーガ」に興味のある方には、日本とインドの中間の東南アジアに残る「インド文明」の足跡として、インドの精神性の伝統への理解と洞察を深める重要なスポットに成るところです。

3) 今回の研修プログラムの日程(10月11日・10月17日)

次が実際に消化した日程です。
・前半10月11日・15日は『パナ・ソム』での「ヨーガ」合宿セミナー
・後半10月15日・17日はカンボジアの『アンコール』探訪
という研修プログラムでした。

10月11日(土)
15:30 関空より8名のグループバンコク空港着、車で『パナ・ソム』に移動
17:30 『パナ・ソム』にチェックイン
18:30 夕食
20:00 ミーティング・講義
  
10月12日(日)ー14日(火)      
05:30 瞑想(自由参加)
06:00 実習
08:00 朝食 
09:30 近くの日曜マーケット探訪
12:00 昼食
14:30 ティータイム・講義
16:00 実習
18:00 夕食
20:00 講義
                     
10月15日(水)
05:00 『パナ・ソム』チェックアウト、車で空港へ移動
06:00 バンコク空港チェックイン
08:00 バンコク・エアウエイズのPG903便に搭乗
09:00 シェムリアップ空港到着、現地の日本語ガイドと合流、
       空港から『アンコール・ワット(ヒンドゥー寺院)』探訪へ 
12:30 昼食
14:00 シェムリアップのホテルにチェックイン
14:30 『アンコール・トム(仏教寺院)』探訪 
17:00 『クメール伝統織物研究所』訪問
18:00 マーケット探訪 
19:00 夕食

10月16日(木) シェムリアップ
08:30 気球に乗り「アンコール」俯瞰
09:00 『タ・プローム(仏教寺院)』探訪
12:00 昼食
15:00 『国立博物館』訪問 
17:00 マーケット探訪
19:00 夕食(アプサラ舞踊)

10月17日(金) シェムリアップ
08:00 『クメール伝統織物研究所・伝統の森』訪問
12:30 昼食『ポールドゥーブル観光専門学校付属レストラン』
14:30 『教育カレッジ』訪問・ヨーガのクラス
16:00 再び『アンコール・ワット』探訪
17:30 空港チェックイン
20:30 バンコク・エアウエイズのPG910便に搭乗
21:30 バンコク空港到着、関空行きの便に乗り継ぎ
22:40 タイ航空TG622便に搭乗

10月18日(土)
06:10 関空着


今回教材として利用されたビデオ
『NHK探検ロマン世界遺産 アンコール遺跡群(カンボジア)』
(講談社DVD BOOK) (単行本)

アンコール国立博物館

クメール伝統織物研究所・伝統の森

シェムリアップの教育カレッジ

The Provincial Teacher Training College
http://www.pttcsrp.com/ 
シェムリアップの周辺地区の学校教員を養成するカレッジで、2年間の教員養成課程が運営されています。今年の12月にこのカレッジで「ヨーガ」のワークショップを実施する予定です。タイの隣国カンボジアでも教育分野で「ヨーガ」の普及活動が展開することを志向しています。

ポール・デューブル観光専門学校付属フランス料理店

http://www.ecolepauldubrule.org/

フランス系のNGO団体が運営する観光専門学校で、キャンパス内に学生の実習のためのフランス料理店とミニ・ホテルを経営、収益は学校の運営資金に加えられます。
 
シェムリアップでの滞在先   
デイ・イン・アンコール&リゾート(Day Inn Angkor & Resort)
http://www.sketch-travel.com/cambodia/hotel/detail.php?hcode=dayinn

(このシリーズ続く)