2008年8月13日水曜日

KDHAMコース参加レポート(5・6月)

今年2008年5・6月に、ロナウラの『カイヴァリヤダーマ研究所』の付属カレッジに短期留学されtた、東京在住の「Y.I.」さんのフィードバックです。


「Y.I.」さんは女性の整体師で、インドの「ヨーガ」や自然療法、アーユルヴェーダにも大変興味を持たれており、今回は『カイヴァリヤダーマ』の付属カレッジの6週間コース受講を中心に、2ヶ月半のインドへの短期留学計画を実行されました。


ロナウラで6週間コースを受講後、プネー近郊のウルリカンチャンの『ニサルゴプチャール・アシュラム(自然療法アシュラム)』にも10日間滞在されました。
インドへ「ヨーガ」での短期留学に興味のある方は、お問い合わせ下さい。適切なアドバイスとガイダンスをさせて頂きます。

近年のインドの治安事情は、特に日本の若い女性が不用意で無計画な一人旅をすることを許すような状況ではなくなっています。インド側での信頼の出来る受け入れ先と、信用出来る人物のネットワークによるサポートが不可欠です。
『カイヴァリヤダーマ研究所』で開講される6週間コースの次の日程です。
・2009年1月15日ー2月25日(冬期)
・2009年5月2日ー6月11日(夏期)
        
【参考情報】
『カイヴァリヤダーマ研究所』について
Kaivalyadhama Yoga Institute
Swami Kuvalyadhama Marg
Lonavla, 410 403, Maharashtra, India
6週間コース(CCY)のページ
Certificate Courses in Yoga (CCY)
Six weeks : Twice a year, January-February & May-June
『カイヴァリヤダーマ研究所』は1924年に「スワーミー・クヴァラヤーナンダ(1883-1966)」によって設立された、世界で初めての「ヨーガ」の学術的研究所です。
インド中央政府の人的資源開発省(Ministry of Human Resource Development、日本の文部科学省に相当)から「An All India Institute of Higher Learning(全インド・レベルの高等教育機関)」として認可を受けています。

また、マハーラーシュトラ州立のプネー大学から研究センターとして認定されています(体育教育専攻の博士課程があります)。


付属カレッジ(正式名称はGordhandas Seksaria Colledge of Yoga & Cultural Synthesis と長い)は1950年に開校されて以来、すでに58年の歴史があります。今までに、「ヨーガ」の分野に有意な人材を輩出して来ました。

付属カレッジの「ディプロマ・コース(10ヶ月間)」は、インド中央政府の人的資源開発省の「教員教育全国審議会(National Council for Teacher Education)」の認定を受けています。卒業生に授与される「D.Y.Ed(Diploma of Yoga Education)」は中・高・大学レベルでのヨーガ教育の教員免許です。入学資格は大卒以上です。
また、付属カレッジは、人的資源開発省の「NIOS(National Institute of Open Schooling (NIOS)」から「ヨーガ」の「サティフィケート・コース」を運営するスタディ・センターとして認定されています。そのため、6週間コース(サティフィケート・コース)を受講するためにも、外国人は「学生ビザ」の取得が義務付けられています。

6週間コースの修了生に授与される「サティフィケート(CCY)」は中高レベルでのヨーガ教育の指導要綱の指導資格に相当します。受講資格は高卒以上ですが、現役の学校教員や職員が優遇されます。
     
1950年の付属カレッジの開校以来、現在までの日本人の修了生は
・「ディプロマ・コース」が約10名
・「サティフィケート・コース」が約20名
というところです。

       
6週間コースについて

コースの目的:
ベーシックで体系的で、教育分野に統合される「ヨーガ」の理論と実習を紹介すること。

コースの期間:
6週間で年2回開講
・1月15日ー2月25日(12月31日願書締切)
・5月 2日ー6月11日( 3月31日  〃   )

コースの性格:
合宿制の集中コース。コース中はキャンパス外の外泊不可。健康上の問題がある者は受講不可。コース中でも医師の診断により継続が不適切と判断された場合コース中断。

コースの受講資格:
高卒以上。英語での授業を受けれる英語力必要。外国人は学生ビザを取得。

コース受講の優先権:.
体育教育の教員免許保持者。州政府の公務員、及び中央・州政府認定の教育機関に勤務する者。

コース受講の年齢制限と健康状態:
年齢制限45歳まで(外国人は年齢制限免除)。35歳以上の志望者は審査後受講許可を考慮。受講願書と共に医師からの健康診断書提出。

コースの受講料:
・インド国籍 9000ルピー 
・外国国籍  1000ドル
(コース途中で中断した場合も、受講料の返還なし)。
 

『ニサルゴプチャール・アシュラム(自然療法アシュラム)』について
Uruli Kancan - 412202
Dist. Pune, Maharashtra (India)

『二サルゴプチャール・アシュラム』は近代インド建国の父であり、インドでの近代自然療法の父でもある「マハートマ・ガンディー(1869−1948)」が1946年に設立した、インドで初めての自然療法の滞在型医療施設です。

年間6000人が自然療法の指導を受けるためにアシュラムを訪れます。
     
自然療法は医薬品や高度な医療技術を一切用いずに、個人の自己治癒力を活用して病気を治癒させる医療体系です。「マハートマ・ガンディー」は自然療法の実践者・臨床家であり、自然と健康にについても深淵な思想家でもありました。
   
「建国の父」が自然療法家でもあったことから、インド政府厚生省の医療政策では自然療法が積極的に推進されています。「ヨーガ」も自己治癒力を発現させる手段のひとつとして、自然療法に統合されています。

従って、「ヨーガ」の医療への応用を考える場合には、インドの自然療法の背景について知っていることが有利になります。また、インド厚生省AYUSH局と国立ヨーガ研究所主導で進められている「ヨーガ教師」の教育課程の標準化案では、自然療法は必修科目となっています。
              
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『カイヴァリヤダーマ研究所・付属カレッジ』への短期留学のレポート
(Y.I.さん、東京在住)    
1)ロナワラの町とカイヴァリヤダーマの環境
ロナウラは、ムンバイ空港から車で2時間ほどの距離にあります。 私は深夜着だったので、空港から、直接タクシーでカイヴァリヤダーマに向かいました。

予定より2時間遅れの到着でしたが、相方先生に紹介して頂いたドライバーの方が待っていてくれ、無事に着く事が出来ました。

ロナウラの街は生活用品の揃うマーケットもありますし、雨季には山々が緑に染まりとても気持ちのよい所です。

カイヴァリヤダーマは、ロナウラの街からオートリクシャで10分弱の距離にあります。キャンパスの中は木々や花々が沢山あり、ヨーガを学ぶのにとてもよい環境でした。

また、キャンパス内に、ショップ(文房具、石鹸、シャンプー、ミネラルウォーター等)もあり、マーケットに行かなくても事足りました。(5月は生徒数も多く、ショップの品揃えがいいようです。)

2)泊まる部屋と食事
部屋は、個別トイレ・バスの2人部屋か、共同トイレ・バスの1人部屋かを選ぶ事が出来ました。私は、1人部屋を選びました。

日曜日など授業がない日はゆっくりと自習もでき、とても快適に過ごせました。

食事は、シンプルなカレーと野菜、フルーツ等でした。この食事のおかげで日に日に体調が良くなり、食生活も随分改善されました。


3)付属カレッジの授業の内容について


実習
毎日、朝と夕に、アーサナ、プラーナーヤーマ、クリヤー等の授業があります。先生方はとても熱心で様々な質問に答えて下さいました。
   
時間のある時は先生のオフィスに行って練習を見てもらうことも出来ました。

講義について
講義は英語とヒンディー語で行われます。私は、講義内容をテープレコーダーに録音して復習するようにしていました。

英語が未熟な私でしたが、先生方もクラスメートもとても親切で、授業ノートを貸してくれたり、英語を私のレベルの英語に訳してくれたりと、みんなに助けてもらいながら講義を受ける事が出来ました。


4)今後参加される方へのアドバイス
    
出発前に相方先生に、「望ましい結果を出す為には、念入りな下調べと慎重で計画的な行動が必要です」という言葉を頂きました。この言葉が留学中ずっと心にありました。

しっかりと準備をして、素晴らしい時間を楽しんで頂きたいと思います。

また、早起きした日は、キャンパス内のお散歩をおすすめします。先生方にお会いして、いろいろなお話を聞けるかもしれませんよ。

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「二サルゴプチャール・アシュラム」での体験レポート
    
1)場所と環境
(ウルリカンチャン環境と、二サルゴプチャール・アシュラムの場所と施設 etc.)
             
ウルリカンチャンは、カイヴァリヤダーマから、列車で移動できる距離にあります。

私は、ロナウラ駅から急行列車(約1時間)でプネー駅に行き、プネー駅でそのまま各駅停車(約40分)に乗り換えて、ウルリカンチャン駅に行きました。

ウルリカンチャン駅からアシュラムまでは、オートリクシャで5分ほどの距離でした。

アシュラム内は公園やトリートメント施設、食堂等があり、ゆっくりと過ごす事が出来ます。


2)泊まる部屋と食事
(キャンパス内のゲスト・ルームとダイニング・ホールでの食事 etc.)

部屋は、泊まる人数とトイレ・バスが個別か共同かによって、値段が変わります。

私はシングル・ルームの共同トイレ・バスを選びました(数日は隣の部屋に人がいなかったので、1人でトイレ・バスを使う事が出来ました。)

その後、隣に入った人が、たまたま公園で仲良くなった人だったので、楽しく、過ごすことが出来ました。

食事は野菜中心で、ドクター(自然療法医)の診察内容にあわせて、個別にとります。

とてもシンプルな食事ですが、日本に帰ってきた今、インドのアシュラムで食べていた食事がとても贅沢なものに感じます。

贅沢という意味は、新鮮な素材で、つくりたての食事を、毎日規則正しく食べる事が出来るという事です。ここのサラダは野菜があまくて本当においしかったです!

3)自然療法の内容について
私が滞在した6月は、雨季の為、ほぼ毎日雨が降り、泥パックは出来ないとの事でした。

私は、毎朝オイルマッサージと、サウナ、腰湯を交互に行うトリートメントを受けていました。

また、ヨーガのアーサナや、プレイヤーのクラスに参加していました。

4)今後「自然療法アシュラム」訪問を考えている方へのアドバイス
私はカイヴァリヤダーマ留学の後、こちらに移動しました。その為、カイヴァリヤダーマでの授業の復習と整理をする事も出来ましたし、ここで、カイヴァリヤダーマ、ディプロマ卒業の先生に出会い、プラーナーヤーマを教えて頂く事も出来ました。

もしカイヴァリヤダーマに留学されるのであれば、その後、こちらで過ごすのもいいかもしれませんね。

今回の留学で、多くの事を学び、安全で快適に過ごす事が出来たのは、
相方先生をはじめ、たくさんの方々のサポートのおかげだと思っています。
本当に心から感謝しています。ありがとうございました。



2008年8月3日日曜日

バンコクのフィールドワーク

「アジアの精神性とヨーガ」のシリーズです。

7月に日本からバンコクへ来られた「S.T.」さんの、「バンコクのフィールドワーク」のレポートです。

S.T.さんは6月の『穂高養生園』での合宿セミナーに参加されました。本業はフリーのライターで、長
年「ヨーガ」やボディーワーク・呼吸法にも深い関心を持たれ、「ヨーガ」の指導もされています。

昨年南インドで「ヨーガ」のインストラクター養成コースを受講、また今年1月にロナウラの『カイヴァリヤダーマ研究所』に短期研修に来られています。
           
もうひとつのライフワーク....
  
わたしたちは「ヨーガ」をテーマにした「インド研究」がライフワークですが、同時に、アジアの国々での「ヨーガ」のプロモーション活動もライフワークです。
          
インドでの研究活動を続けながら、ヨーガの仕事の面では
1998年からタイの大学・財団を活動の場としています。

タイランドはタイ語では「プラテッ・タイ」と言いますが、「自由な人々の国」と言う意味です。欧米に植民地化されることなく、自国民の手によって近代化と民主化を進めてきたタイには、個人の自由を尊ぶ独自の国民性があります。

そして、上座部仏教の宗教文化に基づいた「精神的個人主義」が強く、文化的にもヨーガにも親和性があります。

    
1998年ー2000年までは「セミナー/ワークショップ」としての単発の活動が主でしたが、2001年から政府系の「タイ健康促進基金(SSS)」の助成の対象となり、シーナカリン・ヴィロード大学人文学部哲学宗教学科とマヒドン大学看護学部との共同プロジェクトが始まりました。

2003年からはシーナカリン・ヴィロード大学で「ヨーガ」も単位取得科目となり、一般社会人向けの常設の短期・長期コースが運営されています。また、大学のキャンパス内に「ヨーガ・センター」が設立される方向です。
    

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S.T.さんのバンコクのフィールドワーク  
(2008年7月9日ー19日)           

約10日間にわたりバンコクに滞在しました。タイ・フィールドワークとして、相方先生の活動と関係のあるさまざまな場所に足を運ぶ機会に恵まれました。

主に4つの施設について報告します。

『MCB財団タイ・ヨーガ研究所オフィス』

http://www.thaiyogainstitute.com/
  
相方先生のタイでのヨーガ普及の活動の拠点です。2004年設立。
    
今年から移転した事務所とお聞きしていますが、まず目に飛び込んだのは充実したオフィス環境でした。


大型モニターのパソコンが数台並び、無線LAN対応で、不便なく
使える様子。受付には、ガラスケースに展示された書籍、Tシャツ、ポスター、ネーティ・ポットなど、オリジナルの商品がずらりと並んで、販売体制もバッチリです。

また奥には、大きな釜や薬品が用意され、インドで何年も研修をつんだタイ人のスタッフがアーユルヴェーダを処方しているとのことで、非常に本格的です。

1階・・・研究所のスタッフ・オフィス、
2階・・・相方先生のバンコクの自宅兼オフィス・図書室

3階・・・多目的ホール

月1回発行のマガジンはイラストも入って非常に読みやすそうな情報誌でした(優秀なスタッフ陣がいることでしょう)。

また、ガロテ先生の本も、日本語に訳されていないものがタイではすでに翻訳され、販売されておりました。


ディレクターの『カビーさん』にお会いできました。小柄で穏やかなお人柄ですが、研究所の年間の資金調達を一手に引き受ける敏腕ぶりで、新しいオフィスの買取もすすめてくださった方です(じつは研究所はカビーさんの自宅の5軒となり)。

タイでは、こうしたソーシャル・ワーカーとして働く方たちは、社会的に、精神性の高さで認知されている背景があり、タイで行われる相方先生のワークショップではガビーさんの講義も聞ける、とのことです。

瞑想について、タイの仏教性を背景におきながら、抽象的な概念を
用いることなく、わかりやすく教えてくださる様子です。

『シーナカリン・ヴィロード大学人文学部哲学宗教学科』
http://hu.swu.ac.th/cirriculum.html



シーナカリング・ヴィロード大学はバンコクの中でもトップレベルに入る優秀な国立の総合大学です。キャンパスの様子も、日本の国立大学とほぼ違いはありません(先生や学生がドレス・コード(制服)を着用しているぐらいでしょうか)。

研究室の広さも、ほぼ変わりなく、中心メンバーが数人出入りしている様子でした。

「ヨーガ」は副専攻として単位取得科目になっており、人文学部哲学宗教学科の「インド哲学科目」の中に位置づけられています。

(おもしろいことに、「太極拳」の講義も、中国哲学の中に位置づけられている様子です。こうした身体技法の学問も、人文学部の講義として存在しているのは日本との違いですね)。

さらに健康科学部ではヨーガが必修科目となっており、ヨーガの研究室では、年に一冊のペースで、授業で使える参考テキストを発行していました。ヨーガを学術的に学ぶ環境として充実している様子が伺えました。


また、社会人対象のコースが長期、短期とあり、このコースを終了した社会人が、『MCB財団タイ・ヨーガ研究所オフィス』にヨーガ指導者として登録して、派遣されることも数多くあるようです。

このヨーガ科目設立の経緯を聞いて驚いたのは、相方先生が着手された2001年からの7年間、着実に毎年、進化している点です。

2001年 社会人など外部から20人ほどで講義開始(受講料は政府系の補助金「タイ健康促進基金SSS」で免除)
2002年 マヒドン大学医学部の協力を得て、より充実した講義を実現
2003年 単位取得科目として認可(ガロテ先生講演会を開き、それが大学内の高評価につながる)
2004年〜05年 副専攻科目として認可
2006年〜07年 順調に学生数を伸ばし、当初の倍の人数の生徒数になる(今年は人数調整してクラス人数を減らす方向)

最初は体育館の片隅で、ほかの活動の邪魔にならないように小さなスペースで始まったヨーガの講義も、今では、人文学部の講義室を借り切って、外部からの社会人スタッフも交えて勉強会を開いている様子は、非常に頼もしかったです。

こうしたヨーガの社会的普及の経緯を知ると、相方先生が、最初から大学機関の中で行うことを優先してきた意図が実感されてきます。

大学で行うからこそ、中立的で学術的なものとしての普及が可能になり、医療機関に携わる人への提供もできれば、助成金を得ることで、一般への裾野を広げることもできる。

ブームや一時的な流行で終わることのない普及が実現されています。大学や研究機関の中にヨーガが導入できない日本の現情を思うと少々残念な気持ちになります。
       
『サティラ・ダンマ・サタン』

http://www.sdsweb.org/en/index.php

「サティラ・ダンマ・サタン」はバンコク都内の「ラームミットラ」地区にある、タイの尼僧「メイチー・サンサニット」さんの運営する近代的な瞑想センター。「タイ古式マッサージ」のセラピー・ルームも併設。「タイ古式マッサージ」を受けることが出来ます。

こちらはタイ人の現代的な宗教文化に触れる意味で訪れました。

尼僧の瞑想センターということで、子ども連れの母親が多く、幼児を広場に預けて、その隣の瞑想スペースで、50人近い人数がそろって瞑想している・・・なんていう光景がすぐ目に飛び込んできました。

子育てて一時的に疲れた主婦でもここにくれば元気を取り戻せる、しかも自身の精神の土台である宗教的な時間を過ごすことで回復できるというのだから、ここに流れている空気は、非常に穏やかです。

ワークショップが定期的に行われているらしく、参加者は、白い衣に袖を通し、皆顔つきも穏やかで、それなりに俗世とは違う雰囲気が漂ってきます。

ここは相方先生のワークショップを受けた日本人参加者が研修後、訪問する機会も多いそうです。

驚いたのは敷地内のガーデニングの美しさ。

南国らしく様々な種の樹木、花々、そして池が美しく配置され、お寺というより、どこかのリゾートを思わせます。相方先生に聞いたところ、代表の尼僧はもともとモデル・女優さんだったらしく、知名度も高く、また実業家と結婚もしていたとか・・・。

その方が出家をして、バンコク郊外に瞑想センターを作る、ということはある意味、急激に変化する経済社会の中で、現代の高所得者層にとっても通いやすい、精神の救済所を作ることが社会的に求められている、という時代背景が考えられるようです。

そして、これほど充実した施設が作れるのも、おそらくは元夫や、かつての関係者からの多額の献金を得ていなくては無理な話だろう・・・とのことで。。。

わたしからすると、芸能人が出家する、ことも驚きならば、元夫や
関係団体が売名好意的な扱いで支援しているのではなく、タイの宗教文化の一旦を担って、社会的な貢献として支持し、利用者にとっても、広く一般的に開かれていて、どんな人でも使いやすい環境が整われているというのが、非常に新鮮でした(食堂ではランチが25バーツ。安い!)

ちなみに、食堂では、ワークショップで行われている講義がそのまま生放送でアナウンスされており、どこにいても精神的に落ちつくような環境が整っておりました。

ちなみにマッサージも体験しました。わたくし個人的に、ワット・ポーのマッサージ・スクールの基本コースを終了していますので、どんな腕前か試すように味わっていましたが、さすが瞑想寺のマッサージだけに大変心地よく、充実した内容で、深いリラックスが味わえました。

『ワンサニット・アシュラム』

http://www.sulak-sivaraksa.org/en/index.php?option=com_content&task=view&id=154&Itemid=145

   
「サティラコセーシュ・ナーガプラディーパ財団」傘下の団体で、23年前に「精神性とエコロジー」の実践のために設立。バンコクの中心部からは車で1時間30分のオンカラック地区。「セミナー・センター」としても解放され、各種のワークショップが定期的に実施、外国グループもよく訪問。
            
こちらは、相方先生のワークショップでお馴染みの研修センターです。よく「ちょっとワイルドな研修地」ということで相方先生も紹介されていますが、たしかに、いかだで川を渡らねばたどりつけない・・・という点は非常にワイルドです。

もともと稲作地帯でしたが、土地が枯渇し、荒れ地になっていたところを「環境保護」の地点から開拓した経緯があるようです。

循環システムを意識した植林をしたことで、それまで姿を見せなかった鳥類などが何十種類とこの地に戻ってきた回復ぶり。

こうしたエコ的な活動をしていることもあって政府からの補助金も受けやすく、宿泊施設を毎年、増設中・・・といった様子で、半年ぶりの相方先生も驚くほどの充実ぶりを見せていました。

人工の池をつくり、それも、敷地内を取り囲むような設計をすることで、建物間を移動するときには、小さな橋を数回渡るようになっています。

その都度、蓮の花の美しさに目を奪われたり、水辺の緑を堪能するなど、心落ちつく環境が、きちんと配慮されています。

わたしは、「アシュラム」というだけに何か僧侶っぽい人がいるのか?と思っておりましたが・・・あくまで研修センターのスタッフはソーシャル・ワーカー(社会奉仕活動家)の方たちでした(たしかに僧侶の方たちが宿泊もしていましたが)。

驚いたのは、ここのソーシャルワーカーの方たちの海外研修が非常に豊富なことです。提携しているヨーロッパの研修センターなどにも毎年数人は交換研修を行っているようで、わたしが訪れたときも西洋人のスタッフが何人かいましたし、研修プログラムの打ち合わせをしている外国人が何人かいました。

また、現在はビルマのソーシャル・ワーカーを数多く育成しているらしく、スタッフはその案件で多忙な様子でした。

こうしたソーシャルワーカーは、日本ではNGO(NPO)スタッフという位置づけにあたると思われますが、活動の幅の広さ、資金運営の規模において、日本とは数段の差があると思われました。

非常に精神性の高い優秀なスタッフが多くいるように思われました。

最後に・・・

じつは今回のタイ・フィールドワークの体験として、かなり印象に残ったのは、この「ソーシャルワーカーの社会的地位のあり方」ということです。

それも宗教的な背景を持つゆえの独特な地位です。

日本でいうところのNGO(NPO)のスタッフの活動とタイでは、意味合いが全然違う印象を受けました。

日本の場合ですと、福祉、健康、教育的活動など、政府が率先してルールを作り、公共活動の枠内で行われることが多いかと思われます(介護などは、うまくいっていない例の最たるものかもしれません)。

一方、タイでは、社会整備において外部への委託が多く(相方先生のタイ・ヨーガ研究所も健康・教育的活動の位置づけで、政府から委託されて補助金を得ている、と考えられます)それゆえ、ソーシャル・ワーカーが政府からアウトソーシング(委託)され実質的な社会整備を行うことにより、社会に与える影響度も非常に大きいと考えられます。

それも政治家とは違った次元で「理想的な精神性を提示するシンボル」として注目される面がある、ということがその特徴です。

これは日本と大きな違いです。

相方先生の「タイ・ヨーガ研究所」のスタッフも、ある意味、ソーシャル・ワーカー的な立場だと思われますが、英語をあやつる彼らは、一般企業からみても有能な人材です。

金銭的にも、企業でもっと高額を稼げる機会は得られるはずです。でも、そういう人材が、それでもソーシャル・ワーカーをやるのは「そのほうが、人生にとって意義があることだから」と普通に言えるのが、タイの文化の大きな特徴だと思われます。

もう少し詳しく言うと、個人的なレベルで「意義がある」というのではなく、社会的に認知されたレベルで、精神的に成熟した活動をするから「意義がある」ということを、みんなが意識のどこかで共有している社会だということです。

この背景にあるのは圧倒的な宗教観です。

相方先生曰く、「多くの人が早く仕事を引退して、宗教的な修養をしたいと望んでいる」側面があるらしいです。

聞けば、ある程度裕福な人になると郊外のお寺にセカンドハウスを持って、そこで瞑想にふける人も数多くいるとか。

また、公務員は研修としてお寺に1ヵ月間滞在することも多いとか。医学部生も医者になるのに、お寺で瞑想研修を受けることもあるとか。。。

社会の中に、徹底して、通常の生活の営みと違うレベルで精神性を尊ぶ意識が根づいていることを実感しました。

そんな社会では、ソーシャルワーカーという仕事は独特な精神的なシンボルになりえるのだと思います。

尼僧の瞑想センター『サティラ・ダンマ・サタン』で販売されている書籍類を見ると、著名な仏僧の著作とともに、多くのソーシャル・ワーカーの方の本も販売されています。

僧侶だけでなく、ソーシャル・ワーカーも現代の精神性モデルを提示する重要な役割を果たしているのでしょう。給料は決していいとは言えない状況らしいです。ですが、圧倒的に社会に浸透した「精神的な活動家」としての立場があるのです。

そして・・・

今回、相方先生の活動を通じて知り合った方たちは、ほぼすべて(タイ・ヨーガ研究所のスタッフ、シーナカリン大学の講師や協力者、サティラ・ダンマ・サタンで働く人々、ワンサニットアシュラムのスタッフたち・・・)ある意味、そんなソーシャル・ワーカーとしての立場で活動している方ばかりでした。

単に「労働」としてその仕事をしているのではなく、ある種の高い次元の精神性とつながっているゆえにあえてそこに奉仕している、そしてそれは個人の枠を超えて社会的に(もしくは普遍的に)共有されている意識なのだ、・・・という自覚のもとでやっている。この事実が、じょじょに私にも感じられてきました。

これは、大きな発見でした。こういう生き方をタイの社会は認めているのです。

こうなると・・・振り返って思うのは、こういうタイの社会でヨーガを実践する、関わるということは、やはり何か、日本でやるのとはちょっと違うのだろうな・・・ということでした。

彼らには宗教的なゴールが明確にあり、おそらくヨーガをやることはただ「気持ちいい」だけでなく、宗教的な何かと精神的に結びつく着地点があるはずです。

(それはきっと、瞑想で味わう心の静止観に通じるところであり、人生の生き方に転化できる具体性が伴うものかもしれません)

「ヨーガをしていれば、自分が理想とする宗教的な何かのイメージと結びつく、それゆえ、自分にはヨーガをやる意義がある」と明確に感じる意識構造がタイにはあるんじゃないか・・・と。

相方先生はそこを上手に見抜いて、タイ人が求めるヨーガのエッセンスを提供しているのだと思います。

そうなると考えたいのは、日本人の我々にとってヨーガを通じて感じる精神的な着地点はどこにあるのか、ということです。宗教的な足場をそれほど強く持っていない文化において、ヨーガをやることで、わたしたちは何を感じているのか?

・・・ちょっと、話が大きくなりすぎたでしょうか。しかし、わたしは今回のタイで一番そのことを考えたくなりました。

流行のスタジオやフィットネスではダンスと合体したヨーガとか、ボールを使ったヨーガとか・・・そういった目新しいアメリカ式プログラムも出てきます。おそらくは、(ほかのフィットネスプログラムがそうであったように)時期がきたら、これらは消えていくのでしょう。

こういう一時的なヨーガとは違うレベルで、「一生を通じてやるヨーガ」を求める声も多くなっている事実が日本にもあると思います。

わたし自身も、その一人です。そんなとき、自分の中で「なぜヨーガをやるのか」という精神的なレベルでもっと核となる何かを感じたくもなります。

ただ「気持ちいいから」「心が落ち着くから」という表現だけでない、自分のアイデンティティーと関わる何かを見つけたくなるのです。

この点が、じつはわたしが相方先生の「ヨーガとアジアの精神性」の活動に期待している原点です。

アジア各地の精神性には、インドに原点を持ちながら、派生した宗教観や文化が色濃くあり、その土地だからこそ求めるヨーガのあり方というものがあるのではないでしょうか。

ヨーガ自体、普遍性をもった技法であるのは確か。であるからこそ、その普遍性と向き合う精神性に違いが際立ってくるのではないでしょうか。

今回、タイでの経験は、その一端を見た気がします。日本とは違う何かがある、もっとも、その内実の何たるかは・・・まだわかりませんが。

ヨーガを通じて自分自身を知る、という醍醐味・・・このへんは、さらに深めてみたいテーマです。

以上、バンコク・フィールドワークの報告でした。