(バンコクのワット・ポーにて、左M.L.ガロテ博士、右カヴィー氏)
仕事の面では、わたしたちは1998年からタイの大学・財団を活動の場としていますが、タイでの活動が始まったのは、まったくの「偶然」でした。
仕事の面では、わたしたちは1998年からタイの大学・財団を活動の場としていますが、タイでの活動が始まったのは、まったくの「偶然」でした。
そもそもの始まりは、1997年の暮が押し詰まった頃、南タイのハジャイに住むタイ人のソシアル・ワーカーの友人を訪ねたことです。その時は、その友人を訪ねることだけが目的で、滞在の予定も2週間程度のつもりでした。
しかし、当時はまだタイで「ヨーガ」の指導をできる人物がほとんど居なかった、という状況で、「インドで長年勉強している日本人のヨーガ教師」というのが、どうやら、面白かったようです。タイでも「ヨーガ」への関心はあったのですが、実際に「ヨーガ」がどういうものか、よく分っていなかったのです。
それで、1998年の年が明けてすぐに、ハジャイの地元のソンクラー大学の看護学部で「ヨーガ」の紹介セミナーをすることになり、それから、バンコクのサン・サエンアルン財団に紹介され、1週間の「ヨーガ」のワークシップが企画されたのです。
(当時、その「サン・サエンアルン財団」のマネージャーだったのが「カヴィー・コンパックディーポン」氏で、後に『タイ・ヨーガ研究所』のディレクターになりました。)
その後、いろいろと紹介の輪の連鎖が広がり、結局タイに4ヶ月滞在することになり、タイでの仕事が始まったのです。
1998年ー2000年までは「セミナー/ワークショップ」としての活動が主でしたが、2001年から政府系の「タイ健康促進基金(SSS)」の助成の対象となり、シーナカリン・ヴィロード大学人文学部とマヒドン大学看護学部との共同プロジェクトが始まりました。
『タイ・ヨーガ研究所』
わたしたちが、タイランドでの活動を始めてからの活動目標は、次のようなものでした。
(1)「ヨーガ」の意義と価値を擁護できる中立な「研究所」を設立する
(2)「大学」の中に「ヨーガ」を正式な科目として導入する
(3)厚生省での「ヨーガ」の認知を図る
(1)は、2004年にMCB財団タイ・ヨーガ研究所が設立されたことで達成されました。
(2)はバンコクのシーナカリン・ヴィロード大学人文学部哲学宗教学科で2005年から「ヨーガ」が副専攻科目として認可されたことで達成されました。その後も他の大学の学部や看護大学のカリキュラムへの「ヨーガ」の導入が進んでいます。
(3)はタイ政府厚生省代替医療局に「ヨーガ」の部門が出来て、代替医療の分野での「伝統的ヨーガ」が認知されています。代替医療局が医療スタッフ対象に実施するセミナーには「タイ・ヨーガ研究所」が共同します。
以上のような、わたしたちのタイランドでの「活動目標」は、日本の「ヨーガ」をめぐる構造的な問題の反省から出て来たものだと思います。
一般社会で「ヨーガ」が健全で人々に有益な役割を果たして行くには、非営利活動として、(1)(2)のような中立でアカデミックな枠組みと、(3)のような公的な認知や助成金による財政的な支援が必要です。
日本では、(1)(2)(3)が成立する条件が、なかなか整わないですね.....
タイでそれらが可能になったのは、インドのわが恩師であり近代ヨーガの歩く事典であった「M.L.ガロテ」博士のガイダンスを最初から受けれたこと、及び、2001年から政府系の「タイ健康促進基金(SSS)」の助成の対象となったことが大きなステップでした、が、それだけでなく、背景にあるタイの仏教文化の土壌が大きな要因だと思います。
日本での「ヨーガ」をめぐる構造的問題のルーツは、明治維新以降の急速な近代化とそれまでの伝統文化との関係、そして、第2次大戦後の急速なアメリカ化とそれまでの伝統的価値観の関係、という問題まで視野に入る根の深い問題です。
日本で「ヨーガ」に興味のある方や「ヨーガ教師」の方たちには、「ヨーガ」をチャンネルとして、タイの「仏教的精神性」に触れて行くことはメリットが多いことに思えます。
それは「伝統的ヨーガ」への理解を深めるだけでなく、仏教の伝統に基づく日本を含めた「アジアの精神性」の共通項への洞察を深める機会になるでしょう。
「ヨーガ」と精神性
わたしたちが、タイランドでの活動を始めてからの活動目標は、次のようなものでした。
(1)「ヨーガ」の意義と価値を擁護できる中立な「研究所」を設立する
(2)「大学」の中に「ヨーガ」を正式な科目として導入する
(3)厚生省での「ヨーガ」の認知を図る
(1)は、2004年にMCB財団タイ・ヨーガ研究所が設立されたことで達成されました。
(2)はバンコクのシーナカリン・ヴィロード大学人文学部哲学宗教学科で2005年から「ヨーガ」が副専攻科目として認可されたことで達成されました。その後も他の大学の学部や看護大学のカリキュラムへの「ヨーガ」の導入が進んでいます。
(3)はタイ政府厚生省代替医療局に「ヨーガ」の部門が出来て、代替医療の分野での「伝統的ヨーガ」が認知されています。代替医療局が医療スタッフ対象に実施するセミナーには「タイ・ヨーガ研究所」が共同します。
以上のような、わたしたちのタイランドでの「活動目標」は、日本の「ヨーガ」をめぐる構造的な問題の反省から出て来たものだと思います。
一般社会で「ヨーガ」が健全で人々に有益な役割を果たして行くには、非営利活動として、(1)(2)のような中立でアカデミックな枠組みと、(3)のような公的な認知や助成金による財政的な支援が必要です。
日本では、(1)(2)(3)が成立する条件が、なかなか整わないですね.....
タイでそれらが可能になったのは、インドのわが恩師であり近代ヨーガの歩く事典であった「M.L.ガロテ」博士のガイダンスを最初から受けれたこと、及び、2001年から政府系の「タイ健康促進基金(SSS)」の助成の対象となったことが大きなステップでした、が、それだけでなく、背景にあるタイの仏教文化の土壌が大きな要因だと思います。
日本での「ヨーガ」をめぐる構造的問題のルーツは、明治維新以降の急速な近代化とそれまでの伝統文化との関係、そして、第2次大戦後の急速なアメリカ化とそれまでの伝統的価値観の関係、という問題まで視野に入る根の深い問題です。
日本で「ヨーガ」に興味のある方や「ヨーガ教師」の方たちには、「ヨーガ」をチャンネルとして、タイの「仏教的精神性」に触れて行くことはメリットが多いことに思えます。
それは「伝統的ヨーガ」への理解を深めるだけでなく、仏教の伝統に基づく日本を含めた「アジアの精神性」の共通項への洞察を深める機会になるでしょう。
「ヨーガ」と精神性
「ヨーガ」自体はどの宗教伝統にも制約されないニュートラルなものと考えられますが、「ヨーガ」は近代になるまでインドの「ヒンドゥー教」の枠組みで継承されて来たので、あるレベルから先になると「ヒンドゥー教の精神性」という問題が出て来ます。
「ヒンドゥー教」はインドの民族宗教であり、遠い異国の異教ですから、日本で普通に生活をしている方には、なかなか分りにくいものですし、十分に消化が出来ないところがあります。
しかし、この問題は「ヨーガ」と「アジアの精神性」の伝統という、もう少し広い枠組みまで視野を広げると解決します。
しかし、この問題は「ヨーガ」と「アジアの精神性」の伝統という、もう少し広い枠組みまで視野を広げると解決します。
アジアには「仏教の精神性」が伝承されています。そして、「ヨーガ」と仏教は同じルーツから派生したものですから、「ヨーガ」と「仏教の精神性」には幅広い整合性があります。
特にタイの上座部仏教文化は「ヨーガ」と特に親和性が強く、それが、タイでわたしたちが「ヨーガ」の活動で成功した理由だと思います。
わたしたちも最初は分らなかったのですが、タイで活動をするようになってから、実は、「伝統的ヨーガ」とタイの「仏教的精神性」がとても相性が良いことに気が付いたのです。
そして、それは、わたしたち日本人が「伝統的ヨーガ」を理解し消化するためにも、非常にプラスに作用することも悟りました。
わたしたちのタイでの合宿セミナーに参加されたことのある方はよく解ると思いますが、タイの仏教文化の「精神性」は日本のみなさんにもとても親しみやすいものです。
タイで日本のみなさんを対象とした「ヨーガ」の合宿セミナーを実施することは、「ヨーガ」と「アジアの精神性」についての洞察を深めることに有利に働いているようです。
タイから先
おかげさまで、タイでの「ヨーガ」の普及活動はこの10年間で無事軌道に乗っています。
次は、タイ周辺のカンボジア、ラオス、ミャンマーといった仏教国にも「伝統的ヨーガ」が浸透し、その国々の人たちにも「ヨーガ」を学ぶ機会が増えて行くことが次の目標であり、わたしたちの願いです。
「ヨーガ」を媒介としてアジアの隣人の人たちと交流を持つことは、わたしたち日本人にはリターンが大きいことでしょう。「ヨーガ」によって、ますますこころが広くなり、豊かになることです。
以下は、昨年度のわたしたちの「タイ・ヨーガ研究所」の活動報告です。
2007年度の『タイ・ヨーガ研究所(TYI)』の活動報告
ディレクター
カヴィー・コングパックディーポング(Kawee kongpakdeepong)
2004年に設立された『タイ・ヨーガ研究所(TYI)』は、2007年にその活動開始から3年を経て、活動目的と使命の再定義を行いました。そして、『タイ・ヨーガ研究所(TYI)』の活動目標は次の3点であることが再確認されました。
1)資格のあるヨーガ教師の養成
2)ヨーガの知識管理(Knowledge Management)
3)伝統的ヨーガの一般社会への普及
2)ヨーガの知識管理(Knowledge Management)
3)伝統的ヨーガの一般社会への普及
1)資格のあるヨーガ教師の養成
SWUコース
第1の活動目標をとしては、2007年度も『タイ・ヨーガ研究所』はバンコクのシーナカリン・ヴィロード大学(SWU)人文学部哲学宗教学科と共同で「ヨーガ教師養成コース」を実施しました。前期・後期の2学期制で授業時間は300時間、30名の受講生がコースを修了しました。
SSSコース
また、2007年度も『タイ・ヨーガ研究所』は「タイ健康促進基金(SSS)」の助成を受け、全国4ヶ所の大学・病院(バジャイのソンクラー大学看護学部、シーラチャの赤十字病院、プラチンブリとチェンライの公立病院)で、医療スタッフを対象とした短期コース(60時間)を実施しました。
受講生はまず7日間の集中セミナーに参加し、その後月1回のセミナーに1年間継続して参加するプログラムです。4つのコースで190名の看護師と医療スタッフが参加しました。
受講生はまず7日間の集中セミナーに参加し、その後月1回のセミナーに1年間継続して参加するプログラムです。4つのコースで190名の看護師と医療スタッフが参加しました。
2)ヨーガの知識管理(Knowledge Management)
シーナカリン・ヴィロード大学・副専攻課程
2番目の活動目標である「ヨーガ」の知識管理としては、『タイ・ヨーガ研究所』は、2007年度もシーナカリン・ヴィロード大学(SWU)の学部生対象の「ヨーガ」の副専攻科目を人文学部哲学宗教学科と共同して運営、さらに内容を発展させました。
「ヨーガ副専攻」を選択した学生は卒業単位の一部として、「ヨーガ」で8科目21単位を取得します。
さらに、マヒドン大学医療センター・物理療法学部と共同で、物理療法学部の学生を対象とした「ヨーガ」のカリキュラムを開発しました。
また、「ヨーガ」を体育教育の科目として実施するために、仏教大学と共同しました。
学校教育でのヨーガ・マニュアル
学校教育の現場の教師が「ヨーガ」を導入して行く支援をするために、『子供のためのヨーガ・マニュアル』を開発するセミナーを実施しました。対象は幼稚園から高校までです。
ヨーガ教師のための講座
「ヨーガ教師」の継続教育と、安全な「アーサナ」の指導技術を高めるために、マヒドン大学の物理療法学部の助教授による14の基本的な「アーサナ」を解剖生理学的に分析した講義をシリーズを実施しました。
3)伝統的ヨーガの一般社会への普及
ウエブサイト
3番目の活動目的である「伝統的ヨーガ」の普及活動の一環としては、ます、既存のウェブサイト(www.thaiyogainstitute.com)を発展させました。今年度から、「ヨーガ教師」が経験と意見を広く交換できるように、「掲示板」のページをウエブサイト加えました。
月刊ニューズレターの創刊
また、タイ人の「ヨーガ教師」のネットワークを形成する媒体として、『タイ・ヨーガ研究所』の月刊のニュースレターを創刊しました。
ヨーガ・デリバリー・サービス
『タイ・ヨーガ研究所』は、職場でゆったりと「ヨーガ」を学ぶ機会を提供するため、「ヨーガ・デリバリー・サービス」を継続しました。2007年度は49の会社・団体から注文があり、『タイ・ヨーガ研究所』から派遣された「ヨーガ教師」により、2000名以上のスタッフがそれぞれの職場で「ヨーガ」を学ぶ機会が与えらました。
プラーナーヤーマ合宿セミナー
今年度、『タイ・ヨーガ研究所』はすでに基本的な「アーサナ」に習熟している実習者を対象にして、「ヨーガ」のより深い側面を求める人のための「プラーナーヤーマ」の合宿セミナ−を8回実施しました。