先週1月17日(土)、ロナウラのリゾート・ホテル「Whispering Woods」で「ロナウラ・ヨーガ研究所(インド)」主催による「第4回ガロテ博士記念セミナー」が開催されました。
毎年、ロナウラ・ヨーガ研究所の創立者である故M.L.ガロテ博士(1931-2005)の命日にあたる「1月17日」に開催される恒例の「カンフェランス / セミナー」で、今年で4回目になりました。主催: ロナウラ・ヨーガ研究所(インド)
日時: 2009年1月17日(土)
時間: 午前10時ー午後5時30分
会場: Whispering Woods、ロナウラ
後援: インド中央政府厚生省AYUSH局(CCRYN)、プネー大学
テーマ:日常生活におけるヨーガの応用
今回は、いつものインド中央政府厚生省AYUSH局CCRYNからの助成の他に、プネー大学もスポンサーとして協賛、プネー大学の現学長のナーレーンドラ・ヤーダヴ博士がチーフゲストとして出席、プネー大学の学長による基調講演のスピーチがありました。また、故ガロテ博士と親交が深かったドイツの財団「WEG DER MITTE( A Foundation for Holistic Medicine, Health Education,and Social Service)」の会長であるダヤ・ムリンズ女史もゲストとして列席、ガロテ先生の思い出を織り交ぜながら、ドイツに於ける「伝統的ヨーガ」への興味と期待についてスピーチ。
セミナーの講義としては、バンガロールの「VYASA財団」のディレクターのナーゲーンドラ博士によるプレゼンテーション、また、スワーミー・クヴァラヤーナンダが直接指導した数少ないスタッフのひとりであり、「カイヴァリヤダーマ研究所」にガロテ先生の同僚として長年勤務し、現在はアメリカのフィラデルフィアで「SKY財団」を主宰しているヴィジェーンドラ・プラタップ博士のプレゼンテーションがありました。
今年のセミナーのテーマは「日常生活におけるヨーガの応用」でした。
出席した講演者・プレゼンターは、それぞれの専門分野や立場から、社会生活上の様々な局面でのストレスに賢明に対処しながら、常に肯定的・生産的な態度を保持する鍵となる「ヨーガ」の多面的な実践について、有益な知識とインスピレーションを提供しました。
インドにも世界同時不況の影響や、隣国パキスタンからのテロ攻撃といった「試練」があります、が、基調的なトーンは超「前向き」です。
それがインドの「精神性」の本質とも言えますし、特に「ヨーガ」のセミナーでは、
「ヨーガで益々自分の生き方を確立して行けば、
現実には怖れるような問題は、どこにもないのだ」
というメッセージが色濃く打ち出されます。
今年の研究発表今年の「ガロテ博士記念セミナー」のハイライトは、「ヨーガ・ウパニシャド」の校訂版の出版発表でした。
数ある「ウパニシャド」の中でも、特に「ヨーガ」を主題とするウパニシャド群を「ヨーガ・ウパニシャド」と呼び、総数20とされています。
今回はそのうちの、『トリシキ・ブランマノーウパニシャド(Trisikhi-brahmanopanisad)』
『ヨーガ・クンダリユパニシャド(Yogakundalyupanisad)』
『ヨーガ・チューダーマニユパニシャド(Yogacudamanyupanisad)』
の3つが、複数の写本・出版本から批判的に研究・校訂され、「ロナウラ・ヨーガ研究所」の出版局から1冊にまとめられて出版されました。これは、インド中央政府厚生省AYUSH局のCCRYN(Central Council for Research in Yoga and Naturopathy)からの助成を受けた研究事業です。今年の出版分を第1部として、3部シリーズとして残りの「ヨーガ・ウパニシャッド」の校訂版も今後出版されて行く予定です。
また、今回のセミナーでは、2002年に出版された
『ハタ・ラトナヴァリー(Hatharatnavali)』 の増補改訂版、
そして、故ガロテ博士の著作のマラーティー語版
『Yogic Techniques(ヨーガの技術論)』
『Guideline for Yogic Practices(ヨーガ実習のガイドライン)』
も同時に出版されました。
来年の「第5回ガロテ博士記念セミナー」では、この『Yogic Techniques(ヨーガの技術論)』の日本語版の出版報告もされる予定です(日本語訳原稿はほぼ完成し、現在、「ロナウラ・ヨーガ研究所」の支援会員である「メンバーシップ」に参加されている方に1章ずつ配信中です)。
日本人は7名参加
今年のセミナーには、日本人はわたしたちを含めて7名の参加がありました。
内訳は、現在「カイヴァリヤダーマ研究所・付属カレッジ」で1年間のヨーガ教育のディプロマ・コース(D.Y.Ed)に留学中の2名、同じく、「カイヴァリヤダーマ研究所・付属カレッジ」で現在進行中の1月・2月の6週間コース受講中の2名、そして、もう1名は、昨年「カイヴァリヤダーマ研究所・付属カレッジ」の1月・2月の6週間コースを受講、現在プネー大学に留学中の方でした。
インドで開催される上質なカンフェレンスやセミナーに参加することで、インドの主流社会における「ヨーガ」の今の雰囲気を直接感じることは、ヨーガへの洞察を深めることに役立ちます。
特に、今回参加された日本人の方は、全員ロナウラでヨーガを勉強している方ですので、非常に有益なセミナーだったと思います。
ヨーガ・ウパニシャド
ヨーガ文献は次の3つのグループに分類されます。
(1)『ヨーガ・スートラ』とその注釈書
(2)『ハタ・ヨーガ』のテキスト(主にナータ派の文献)
(3)『ヨーガ・ウパニシャド』
次のリストが20の『ヨーガ・ウパニシャド』です。
1.アドァデャ・タラカ・ウパニシャド(Advadya Tarakopanisat)
2.アムルタ・ビンドゥ・ウパニシャド(Amrta Bindupanisat)
3.アムルタ・ナーダ・ウパニシャド(Amrta Nadopanisat)
4.ブラフマ・ヴァイディヤ・ウパニシャド(Brahm Vaidyopanisat)
5.ダルシャナ・ウパニシャド(Darsanopanisat)
6.ディヤーナ・ビンドゥ・ウパニシャド(Dhyana Bindupanisat)
7.ハンサ・ウパニシャド(Hansopanisat)
8.クシュリカ・ウパニシャド(Ksurikopanisat)
9.マハー・ワーキャ・ウパニシャド(Maha Vakyopanisat)
10.マンダラ・ブラフマン・ウパニシャド(Mandala Brahmanopanisat)
11.ナーダ・ビンドゥ・ウパニシャド(Nada Bindupanisat)
12.パシュパタ・ブラフマン・ウパニシャド(Pasupata Brahmanopanisat)
13.サンディーリヤ・ウパニシャド(Sandilyopanisat)
14.テージョー・ビンドゥ・ウパニシャド(Tejobindupanisat)
15.トリシキ・ブラフマン・ウパニシャド(Trisikhi Brahmanopanisat)
16.ヴァラハ・ウパニシャド(Varahopanisat)
17.ヨーガ・チューダマニ・ウパニシャド(Yoga Cudamanyupanisat)
18.ヨーガ・クンダリ・ウパニシャド(Yoga Kundalyupanisat)
19.ヨーガ・シッカ・ウパニシャド(Yoga Sikhopanisat)
20.ヨーガ・タットワ・ウパニシャド(Yoga Tattavopanisat)
ヨーガをヨーガとして成立させるリソース
ヨーガは歴史の古い分野ですが、現在入手可能な信頼に足る資料の分量はまだまだ不足しており、世界的に高まっているヨーガへの興味を満たして呉れるには不十分な状態が続いています。
ここ数年で、インドでのヨーガを巡る状況も、大きく展開しています。これは、大きな歴史の流れと思われます。一過性の流行や単なる社会現象を域を超えて、持続可能な活動としての「ヨーガ」を成立させるためには、「ヨーガ」を「ヨーガ」として成り立たせているインドの伝統的・文化的背景や、学術的なリソースの裏付けが必要になります。
『ロナウラ・ヨーガ研究所』は、真正で伝統的なヨーガの文献を世界のヨーガ・コミュニティーのドアに届けることを意図して活動しています。
ヨーガにおける「カーシー(学問の座)」であるロナウラでは、定期的に国際会議(カンファレンス)やセミナーが開かれています。機会があれば、それらに参加されることは、インドにおけるヨーガの動向を知るために、非常に有益に思えます。次のロナウラでの「国際会議・セミナー」の予定です。
カイヴァリヤダーマ研究所主催第6回国際会議
日時:2009年12月27日(日)・30日(水)
ロナウラ・ヨーガ研究所主催第5回ガロテ博士記念セミナー
日時:2010年1月17日(日)
これらの「国際会議・セミナー」参加を兼ねた、小グループでのインドへの研修ツアーも企画される予定です。興味のある方はお問い合わせ下さい。
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書名:
『ヨーガ・ウパニシャド:
トリシキ・ブランマノーウパニシャド
ヨーガ・クンダリユパニシャド
ヨーガ・チューダーマニユパニシャド』
編者:
マンマット.M.ガロテ、パリマール・デーヴナート、
ヴィジャイ・カント・ジャー
紹介:
20種のそれぞれのヨーガ・ウパニシャドのように、
これら3つの代表的ヨーガ・ウパニシャドは、
ヨーガの特定の技術やヨーガ的課題について
詳しく解説している。それらは、現在出版されている
ハタ・ヨーガの文献では容易には得られないもの
である。
ヨーガ・ウパニシャドの貢献は、ハタ・ヨーガの
技術を用いて絶対的な合一性(アドバイタ)を
実現しようとする取り組みにある。
「実在の不二一元性」を至高であると称賛する
アドバイタ理論は、「二元性」を「苦痛と苦悩」に
他ならないと見なす。
苦痛と苦悩から自由であるために、
ヨーガ・ウパニシャドはハタ・ヨーガの修練が
有効な手段であると推薦する。
この意欲のもとに、ヨーガ・ウパニシャッドは多様な
二元論と一元論の哲学的体系での世界観の統合を
試みる。
それは、これらのテキストに鮮やかに展開されている。
ISBN:81-901617-9-2, 332p., 2009年、
価格:800ルピー(インド国内)、45ドル/35ユーロ(インド国外)
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