2012年5月13日日曜日

バンコクの近況2012(2)

3)タイのヒンドゥー遺跡(パノムルン歴史公園)
4)スリンでワークショップ

Sawadee kha !
皆さんいかがお過ごしでしょうか?
『 バンコクの近況2012(1)』の続きです。

IMG_2211
 
3)タイのヒンドゥー遺跡(パノムルン歴史公園)

5月3日(木)-9日(水)、東北タイのスリンへ出張がありました。バンコクから車で6時間、隣国のカンボジアと接している県です。

その週末はタイも3連休なので、スリンで3日間のヨーガのワークショップの予定が入ったのです。しかし、私たちがスリンに出かけた動機は、久しぶりの地方でのヨーガのプロモーションの仕事もありますが、むしろ、その地区に点在している中世クメール時代のアンコール遺跡を訪ねることの方が大きかったですね。

IMG_2285

今はタイ国内ですが、9-13世紀頃は、シーサケット、スリン、ブーリラム、ナコーン・ラーチャシーマーの一帯は、シェムリアップに首都があったクメール帝国の周辺国であったところです。

昨年12月にはナコーン・ラーチャシーマーのピーマイにある「ピーマイ歴史公園」を訪ねました。11ー12世紀にヒンドゥー寺院として造営され、後にクメール最盛期の仏教王(菩薩王)であった13世紀のジャヤバルマン7世によって大乗仏教寺院に改修された遺跡があります。

13世紀にアンコール・トムの都城を築いたジャヤバルマン7世は、世界で一番多くの石を動かした王、と言われています。私たちが現在アンコール遺跡として目にしている遺跡群は、ジャヤバルマン7世時代のものです。それ以降、クメール帝国は衰退、大規模な石造建築は行われていないのです。

「ピーマイ歴史公園」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%A4%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E5%85%AC%E5%9C%92

IMG_1258IMG_1313

 
今回訪ねたのは、スリンの隣のブーリラムにある「パノムルン歴史公園」と、その近くのムアンタム遺跡でした。どちらも11-12世紀のアンコール時代のシヴァ寺院で、特にパノムルンは丘の上の本格的なクメール遺跡で、驚きました。

「パノムルン歴史公園」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%8E%E3%83%A0%E3%83%AB%E3%83%B3%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E5%85%AC%E5%9C%92

IMG_2355IMG_2374
 
Picasaにフォトアルバムが作成してあります。
https://picasaweb.google.com/103061544163066016927/2012SIAMSurinPhnomrung?authkey=Gv1sRgCID40O3x0NbCvwE

実は、昨年12月に「アンコール編2011」の企画があったのです。2部構成で、第1部は東京の旅行代理店から依頼されたプログラムで、「ワンサニット・アシュラム」で4泊5日の合宿セミナーの後、カンボジアに移動して2泊3日で世界遺産のアンコール遺跡探訪。第2部は、グループの帰国後に私たちはシュムリアップに留まり、日本から来られる少人数の方たちとアンコール探訪を続ける、というものでした。

しかし、「アンコール編2011」は昨年10月・11月の「バンコク大洪水」の余波で延期。企画自体はたいへん面白いので、今年5月の連休後に実施、という予定だったのですが、これも再延期となっていたのです。

じゃあ、また自分たちだけで、またタイ領内のヒンドゥーの遺跡を訪ねようか、と考えていたところに、タイミング良くスリンでの仕事の話が来たのです。

昨年12月に「アンコール編2011」が延期になったときには、自分たちでナコーン・ラチャシーマーのピーマイ遺跡(ヴィマヤナガラ)を訪ねました。ピーマイの町の中心に歴史公園として整備してあって、アクセスは問題なかったです。

ふつうのタイの田舎町のど真ん中に中世のヒンドゥー/大乗仏教空間が出現している、という異質なコンビネーションがピーマイの面白いところです。突然、現在から中世の異次元空間に迷い込む幻惑観があります。

一方、パノムルン遺跡の方は、アクセスに問題があります。近くの町から離れた山の上にあるのです。出張セミナーのあったスリンの町からは60キロくらい(車で1時間弱)離れており、さて、交通手段が問題でした。

しかし、上手く行くときは上手く行くもので、幸運にも、スリンでのプログラムの主催者のメーオ(ブンラード・ニヨントン)さんの地元の友達で、カンボジア国境地帯の子供の教育支援のNGOを運営されているレックさん(男性)が、パノムルンまで車を出してくれることになりました。


さて、5月5日(土)ー7日(月)で3日間のセミナーをやった後、8日(火)の午前中にパノムルンに出かけたのです。

タイは地方に行っても道路網が良く整備されています。それで、みんな平気で時速100キロー120キロで車を飛ばします。道は広いのですが、ちょっと、こわいですね。

スリンの町からカンボジアの国境まで40キロ、国境を越えたカンボジア側も最近ハイウエイが整備されて、アンコールの首都であったシェムリアップまで200キロ、2時間ほどです。スリンからシェムリアップまで車で日帰りも可能です。

中世には、ジャヤバルマン7世が整備した道路網(王道)がアンコールの地方都市を結んでいました。それぞれの王道はアンコール・トム都城の中心に建立されたバイヨン寺院(観世音菩薩がご本尊)が終点でした。

パノムルン遺跡はスリンの隣の県のブーリラムにあります。スリンの町から60キロほどです。パノムルン遺跡のある町に入ると、レックさんの車が一軒のお店の前で止まりました。レックさんが指を差して、「この奥の家が私の両親の家です、今は誰も住んでいませんが」と言われたので、驚きました。

なるほど、実は、遺跡のある町で生まれた人に案内してもらう巡り合わせになっていたのですね!!

パノムルンは小高い死火山の上にあります。遺跡のある頂上まで車道が整備されていて、駐車場やレストラン、お土産物屋さんがひしめいています。思ったより観光地でした。

IMG_2425

ちょうど雨季入りしたばかりなので、幸いお天気も曇り気味で、思っていたほど暑くもなく、よく整備された遺跡公園をゆっくり1時間ほどかけて見学することが出来ました。

IMG_2355
 
パノムルンは中規模の本格クメール遺跡でした。期待していた以上で、びっくりしました。これなら、山の上までわざわざ見学に来る価値ありますね。カンボジアのアンコールまで行かなくても、十分、タイ領内で中世のアンコール気分に浸れます。

IMG_2374

本堂はシヴァ寺院です。中心にシヴァ・リンガムが安置され、シヴァの乗り物のナンディの像も残っています。

IMG_2395IMG_2385

寺院内のそれぞれの浮き彫りのテーマは、マハーバーラタであったり、ラーマヤナであったり、プラーナのクリシュナ神話であったりします。当時の人々はこのような浮き彫りを見ながら、ヒンドゥーの神々の世界にこころを向けて、宇宙と神々と共に生きていたのでしょうか。

IMG_2400

一番印象に残ったのは、「Five Yogis」と書かれた浮き彫りです。シヴァ派のパシュパタ派の5人のヨーギーの坐像、と説明がありました。アンコールにはシヴァ派のヨーギーの集団が存在していた、という記録があります。このパノルムルン界隈にもヨーギーやサドゥーが住んでいて、ヨーガ修行をしていたのでしょう。ハタ・ヨーガも行われていたはずです。

IMG_2391


また、本堂の入り口の浮き彫りが「ヨーガ・ダクシュナムルティ」で、これも、驚きました。ダクシュナムルティの形を取ったシヴァです。現代インドではマイナーな神様ですが、アドヴァイタ・ヴェーダーンタの教師であり、言わば「学問の神・知識の神」です。私たちにも身近な「ダクシュナムルティ」さんと、タイ領内のクメール遺跡で対面することになり、不思議な驚きと感激がありました。

IMG_2376
 

強大なクメール帝国の基盤を築いた9世紀のインドラヴァルマン王はシャンカラ・チャーリア派の師(グル)からアドヴァイタ・ヴェーダーンタ(不二一元論)を学んだ学識の高い賢王であった、と伝わっています。

中世までの東南アジアには、いくつものヒンドゥー・大乗仏教王国が存在していました。カンボジアのクメール王国、南タイのドヴァーラヴァティー王国、ベトナムのチャンパ王国、インドネシアのシュリーヴィジャヤ王国などです。

今の「インド共和国」で「インド」を考えると、大きな錯覚を起すと思います。かってのインド世界は、現在のベトナムからインドネシアまで広がっていました。


さて、パンムルン遺跡は丘の上にありますが、近くのムアンタム遺跡の方は下の平地にあります。規模は小さいですが、よく整備され、遺跡の周りはきれいな公園となっています。タイの観光客の人たちも楽しんでいました。

IMG_2292

パノムルンは砂岩で造られていますが、ムアンタムの方は煉瓦造りでした。これも、シヴァ寺院ですが、東西南北の4つのお堂は残っていますが、肝心の中心の本堂が崩落しており、シヴァ・リンガムやナンディは見かけませんでした。

IMG_2301

IMG_2308

13世紀頃まで、このあたりには有力なクメールの周辺国があったようです。その後、台頭して来たタイ族のスコータイ王国に押され、クメール王国は衰退して行きました。スコータイ王国はスリランカ伝来の上座部仏教を信奉したので、それ以降、タイは上座部仏教化し、クメール系のヒンドゥー・大乗仏教は消滅して行きました。


☆☆☆☆☆

からだをストレッチするだけでなく、こころのストレッチもヨーガのトレーニングです。

無限な宇宙に向かって開かれている中世ヒンドゥー世界の不思議空間にこころを遊ばせ、こころを異次元に同期させて行くことは、こころのバランス効果絶大のようです。

それで、今後、タイの「ワンサニット・アシュラム」でプログラムを組む場合、タイ領内の「ピーマイ&パノムルン」のアンコール遺跡探訪も組み合わせようと、という計画を立てています。

タイにあるアンコール遺跡の不思議空間に浸るのは、こころのストレッチ効果への条件満載ですね。バンコクから1泊2日で組むことが出来ます。
今年は11月に「ワンサニット秋合宿2012」を予定していますので、早速、それに組み合わせて見ようと思います。

IMG_2364

「ワンサニット秋合宿2012+タイ領内のクメール遺跡探訪」
日程:2012年10月28日(日)-11月3日(土)
定員:6名以上でプログラム成立
対象:ヨーガの初心者からベテラン・指導層まで
内容:ワンサニット5泊6日+クメール遺跡1泊2日
目的:伝統的ヨーガの理論と技術/歴史的背景への洞察深化
施設:アウトドアー派のエコロジー実験施設(冷房・温水シャワー無)
食事:タイ料理式ベジタリアン
費用:実費分担+ドネーション

「ワンサニット秋合宿2012+」に興味のある方は、どうぞ、ご連絡下さい。


4)スリンでワークショップ

さて、スリンでは、私たちの古い友人のメーオさん(Boonlerd Niyomthongさん)の主催で3日間のヨーガ+自然療法のセミナーがありました。

メーオさんは、筋金入りの国際派ベテラン・ソシアルワーカーで、自由を愛するひとです。タマサート大学卒業後、1980年代のカンボジア難民キャンプ時代からNGO活動に参加。

IMG_2451
 
タイ人ですが、中味はクメール系で、クメール語が母語です。スリンなどの国境地帯にはクメール系の人たちの人口が多いのです。

メーオさんはイギリス留学歴もあり、タイ語・クメール語・英語が堪能です。長年プノンペンでも活動して来られ、今でも、プノンペンに本部のあるカンボジアの仏教系のNGOの活動にも参加されています。

メーオさんと知り合ったのは、最初に私たちをタイに招聘した故スパポーン・ポンプリックさんのNGO仲間であったことが切っ掛けです。ソシアル・ワーカーはハードな仕事なので、一定の年齢になると健康問題が出て来ます。メーオさんも2005年頃から、ヨーガや自然療法、ヴィパッサナーに関心が深くなり、インド人の自然療法医を招聘してタイやカンボジアに自然療法を紹介するワークショップを企画する活動を始めました。

2007-8年にはインドを訪ね、ケララの自然療法センターに長期滞在、またロナウラのカイヴァリヤダーマ研究所で6週間コース(CCY)を受講されています。

また、インドのゴーエンカ先生系のVipassanaも熱心に続けられ、英語が堪能なのでタイのセンターでボランティアー・スタッフの「ダンマ・ワーカー」の仕事をよくされています。タイのセンターで日本人の参加者がいる時に、メーオさんにお世話を頼むこともあります。

昨年からメーオさんはスリン郊外の実家のある村に、自宅兼コミュニティー・センターの建築を始めているところです。今後は自分の出身地の村をベースとした活動もしたい、ということで、自然療法やヨーガのプロモーション活動を試みているところです。

 
バンコクは連日40度を越える猛暑でしたが、すでにスリンでは雨季到来、夜中に雨が降ったりと、バンコクよりは涼しかったです。バンコクから夜行の寝台列車でスリンに行きましたが、バンコクのファランポーン駅を出発したのが午後9時過ぎ、スリンに着いたのが翌朝8時頃、およそ11時間の列車の旅でした(高速バスなら6時間なのですが)。

メーオさんの村は、スリン市内から車で20分ほど行ったところで、それはそれは閑静な南国ヴィレッジでした。メーオさんは11人兄弟の末っ子、周りの家はほとんどメーオさんの親族の家です。お父さんはシェムリアップのトンレサープ湖で取れる魚をスリンに卸す仕事をされていたそうです。

私達が泊まったメーオさんの家にもニワトリ、アヒルが走り回り、犬も5匹くらいが遊びに来て、木のそばの地面を掘って昼寝をしたりしていました。
近くには牛小屋もあり、お姉さん達が交代で牛を外に連れ出したり、夕方連れ戻したりと世話をしていました。最近は水牛が減って牛が増えているそうです。水牛は農耕に使われていましたが、いまは農業は機械化、代わりに肉牛の飼育が盛んなようです。
 

参加者の人たちは延べ7名、全員女性でした。スリン市内や隣のブーリラムの人たちで、年齢は20代から50代、ヨーガが始めての人、CDで練習したことのある人、テレビや雑誌でヨーガのことを見たり聞いたりしたことがある人、という面々でした。

IMG_2234IMG_2243
 
さすがに、スリンにはまだヨーガ・スタジオはありませんが、公共の健康ウエルネス・プログラムで、ヨーガのようなストレッチ体操を経験したことがある人もいました。

他、自然療法の料理を作るメーオさんの友だちスタッフが2名、またメーオさんのオランダ人の友人でチェンライに住んで英語を教えているモニカさん、そして、私たちの友だちで、バンコク在住の日本人のM.I.さん(女性)が会社の連休を利用してこのセミナーに参加されました。

日中は日が照ると家の中がとても暑くなるので、昼間は庭の木の下にマットを敷いて講義や実習をしました。呑気なプログラムでした。

IMG_2281IMG_2274


最初タイに来た頃は、このような田舎でのプログラムもよくやったのです。
「Promotion of Yoga in Asian Countries(アジア諸国でのヨーガのプロモーション活動)」というのが、当初の私たちの活動主旨でした。

ここ10年くらいはバンコクの大学でのコースに集中していたので、私たちにとっては、久々の南国の田舎でのヨーガ・セミナーとなり、大いに楽しかったです。

バンコクの都会の人たちと比べて、身体は健康で頑強な人たちですが、やはりそれなりの健康問題はあるので、健康のためのヨーガや自分で工夫できる自然療法への関心が高まっているのは間違いないですね。

最近は、地方へのヨーガのプロモーション活動は、うちが所属するMCB財団の仕事として、うちのタイ・スタッフが担当しています。地方の公立病院との1年間契約での仕事などがあります。

今回は、長年の友人のメーオさんの個人的な依頼であり、私たちも国境近くのクメール遺跡を訪ねたい、という希望があったので、みんなにプラスになった楽しいプログラムになりました。

上手く行くときは、なぜか、上手く行くようです。

IMG_2255


 
(この項続く)


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



0 件のコメント: