2009年6月3日水曜日

タイ・ヨーガ研究所2009(1)

6月に入りましたが、みなさん、お元気でお過ごしでしょうか。日本も次は「梅雨入り」でしょうが、こちらは、みなさんより一足早く雨季入りしています。

1)バンコクに移動しました

先週5月29日(金)に、バンコクに移動して来ました。12月まで、今年のバンコクでの「仕事期間」が始まりました。

バンコクに来てみると、今年はこちらは雨が始まるのが早かったようで、もう、すっかり雨季です。雲が低いです。バンコクの街は水の中です。

乾燥したプネーから湿度の高いバンコクへ来ると、からだが水分を吸うようで、どうしても、からだが重く感じます。順応するのにしばらく時間がかかります。

皮膚の状態が変わり、鼻の状態が変わります。環境が大きく変わると、適応に2・3日は必要ですね。適応期間中は食事に注意し、休息も十分に取るように心がけています。

オフィスの新メンバー

『タイ・ヨーガ研究所(TYI)』の新オフィスはバンコク新空港に比較的近いラームカンヘン通りにあります。渋滞がなければ空港から車で20分の距離です。

2004年に設立された『タイ・ヨーガ研究所』は、昨年6月に今の場所に移転して来ました。新オフィス体制も1年になり、新しいメンバーが加わっていました。

クレ君です。昨年から勤務しているスタッフのマチマーの相棒です。生後3ヶ月のイングリッシュ・コッカー君です。顔が長く、耳も長く垂れ、尻尾がおまけのように短いですね。おとなしく、落ち着いた気性のようです。

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『タイ・ヨーガ研究所』は、ディレクターのカヴィー氏を入れて、

現在常勤スタッフが5名+1匹の体制です。クレ君も毎日出勤しています。それに、メイドさんがひとり。オフィスの5軒隣にあるカヴィー家付きのメイドさんですが、わたしたちが滞在期間中はわたしたちの食事や身の回りの世話も担当します。

あと、非常勤・ボランティアー・スタッフが30-40名くらいでしょうか。母体のMCB財団は中堅どころの財団ですが、そのヨーガ部門であるうちの『タイ・ヨーガ研究所』は、タイのNGOオフィスとしてよくあるような、一般的な規模です。

バンコクに来られる方は、どうぞ新オフィスの方にもお立ち寄り下さい。歓迎いたします。クレ君もみなさんを歓迎します。

「インスティチュート」

英語の「インスティチュート(Institute)」という言葉は、辞書的には
「【名】研究所、研究を目的とした協会、機関、学会」
という意味ですが、日本語で「研究所」と直訳すると、やや固い意味に
聞えますね。

しかし、実際には、「インスティチュート」にはかなり広い意味があり、 様々な規模の施設や団体に広範囲に使われています。

例えば、インドでは、ヨーガの分野でも、大まかに言って、
・宗教施設は「アシュラム」
・そうでない施設は「インスティチュート」
という使い分けがあります。

使い分けの傾向としては、
「アシュラム」は、特定の宗教的信条や主義を実践する、やや閉じた場、
「インスティチュート」は、客観性のある知識を扱う、社会に開かれた場、
という違いでしょうか。

また、
「アシュラム」は伝統色が強く、非公式的な知識の伝達が重要視され、
「インスティチュート」は近代色が強く、一定のカリキュラムに従った
公式的な知識の伝達に比重が置かれる、という性格があります。

ロナウラの『カイヴァリヤダーマ研究所』や『ロナウラ・ヨーガ研究所』は英語ではそれぞれ、「Kaivalyadhama Yoga Institute」「Lonavla Yoga Institute」です。

また、プネーにあるB.K.S.アイアンガー氏の自宅兼道場は、通称『アイアンガー・インスティチュート(Iyengar Institute)』です(正式名称はやや長いのですが)。

あと、「アカデミー(Academy)」という用語も、インドでも良く用いられます(例:Vipassana International Academy)。

これも、「インスティチュート(Institute)」と同様な使われ方をしています。仮に扱う主題は伝統的なものとしても、取り扱い方は近代的、というアプローチが「アカデミー」と称する施設の傾向です。

ヨーガのように、本来、個人の主観的体験に基づいた伝承的・伝統的な知識も、現代社会ではスタンダード化され、インスティチュート化して行くのが大局的な方向性です。

インドでは、形態は伝統的な「アシュラム」でも、教授面や運営は近代的な「インスティチュート」という組織が、総合的に良い結果を出しているように見えます。そのような施設では、伝統的で非公式的な教育と、近代的で公式的な教育の両方が、バランス良く行われるからでしょう(例えば、ロナウラの『カイヴァリヤダーマ』はそういう場所でしょうか)。

タイのお家騒動も一段落

ここ3年余り続いているタイの「お家騒動」も一段落しています。タイの国内政治も新しい方向に動いていて、興味深い展開ですね。先行不透明感はありますが、当面は「非常事態宣言」とか「クーデター」とかの強引な方向には、もう行かない模様です。

29日の朝バンコク空港に降り立ったときに、もとの「タイ」らしい雰囲気に戻っているように感じました。

昨年12月にインドに帰るときには、市民運動のクライマックスとなった空港占拠・閉鎖から日が浅かったので、かなりの緊張感が残っていました。

(また、わたしたちはインド滞在中でしたが、4月始めにも、もうひとつの市民運動のクライマックスがあり、「非常事態宣言」が出ましたが)。

タイの人たちは、日常の気質的には穏やかなのですか、政治的には過去激しい政治闘争を繰り返して来ている歴史があります。

1970年以降、日本では政治闘争としての「激しい市民運動」という社会現象が消滅しているので、そのあたりの感覚が分り難くなっていると思います(政治に「温度」があるのは、ある意味羨ましいことにも思えますが)。

インドも先月、5年に1回の総選挙が終わりました。日本にも報道されていると思いますが、選挙の結果は、またまた事前の予想を覆すもので、インドの「摩訶不思議」性が思う存分発揮された展開でした(この件も、別の機会にコメントしたいと思います)。

タイやインドのような、まだまだ途上国の民主主義には、実際に国家を動かしている中間層・知識層の意向が現実政治に十分反映されない、という構造的な問題があります。国民の大半が中間層である日本のような先進国では近代的民主主義は円滑に機能しても、中間層が人口の10-20%である途上国では、どうもむつかしいようです。

民主主義では、政府の仕組みを良く理解し、政治意識の高い都市の中間層も選挙で行使できる投票権は1人1票。特に政治意識が高くなく、お金で票を買い集める金権政治家に依存されている地方の農民層も、選挙では同じく1人1票。

ここ数年のタイの国内政治問題には、この近代民主主義の矛盾が根底にあります。お金のある陣営が地方の貧困層の票を直接・間接に取り込むことで、「合法的」に権力の独占を謀った、という展開です。

(もちろん、かんたんには図式化できない複雑な背景と、それぞれの陣営の思惑の交錯がありますが)。

そして、その流れに抵抗して形成されたのは、現在の政治のあり方をより中間層・知識層の意向が反映される形態に変革するべきである、と主張する勢力で、そのグループが、ここ3年余り街頭での激しいデモ活動や、政府庁舎や空港の占拠といった政治活動を主導して来ました。

(具体的には国会議員の一部を指名制にして、私欲のない有識者が選挙で選ばれなくても政策運営に参加出来る制度にする etc.)。

この勢力が、この度「新政党」を結成することを決定、次の総選挙に出る、という展開です。街頭のデモ活動から、国会での政治闘争に移ろうという局面です。これはバンコクの中間層に歓迎されています。始めて自分たち意向を代弁する政治勢力を国会に持つ、ということで。

この政党は、党員のメンバーシップによる「会費制」で運営される方針です。タイにも「インターネット」を通じた「政治変革」の動きが出て来たという現象でしょう。もちろん、現実的には、成功するかどうかの先行きは不透明なのですが、そこには「変革」への意志と希望があります。

都会の中間層・サラリーマン層は、グローバル化でますます激化する競争の中で、日々のストレスで青息吐息で経済社会を維持しているわけですから、田舎の貧困層の票をカネで買い占めて権力を独占し、私利私欲に走る政治家には、ほんとうに頭にきています。

良く言われることですが、タイの人々には独特の政治感覚・バランス感覚があるようです。全体の利益を考える、というセンスがあります。これは日本人に近い感覚と思われます(全体の利益を考える、というセンスは、インドにはないようですね....)。

バンコクの日本化

さて、今回バンコクに着いて驚いたことは、「日本化が進んでいる」ことです。うちの使っている携帯電話(DTACという会社)のサービスも、タイ語・英語に加えて日本語サービスが加わりました。驚きです。

町を歩いても、目に入る日本語が増えている気がします。消費文化やポップ・カルチャーのモデルは「日本」です。

中国の台頭により、タイ社会にも「中国化」の波が押し寄せて来ていますが、ビジネス的には中国の影響力が強まって行くのは必然としても、今の「共産中国」には文化的な影響力はないですね。むしろ、文化的には嫌われている....

だから、「中国化」よりも、意外に「日本化」なのかもしれない。これも、大局的な、タイ的バランス感覚、かも知れないですね。さらに、決して「コーリア」ではないようです。タイの人々は韓国のことを何とも思っていませんね。韓国は日本のような羨望の対象にはならない。

大局的な動向、というは、どうも、そのあたりではないでしょうか。やはり、タイと日本の交流・相互理解は、長期的で総合的なリターンが大きいでしょう。タイと日本は抵抗少なく混ざり合うと思います。わたしたち日本人が、タイの文化や社会に触れたり、タイの友人を持つことは、自分の人生に大いにプラスに作用することに思えます。


2)来週から日本

来週から日本への「出張」があります。6月15日(月)から25日(木)の期間に、長野の穂高にある『穂高養生園』というリトリート施設で、合宿セミナーを3つ実施します。

昨年は延べ40名余りの方の参加がありましたが、今年は延べ60名近い方が参加される予定です。 

また、今年の日本での合宿セミナーの結果を見て、今後、日本で1ヶ月間程度の学習コースの実施が可能かどうか、考察してみるつもりです。

韓国組の台頭

ときどき話題として取り上げていますが、ヨーガに関しては、韓国はますます成長していますね。これは、ロナウラの『カイヴァリヤダーマ』で勉強した韓国組の人数のボリュームが支えている現象です。

付属カレッジの1年間のディプロマ・コース(D.Y.Ed.)の卒業生は過去12年間で30名を超える勢いです。6週間コース(CCY)の修了生は、その倍以上でしょう。

また、今年から『カイヴァリヤダーマ』では、韓国人対象の4週間コースが別枠で運営されています。2月に第1回目のコースが実施され、6月にも第2回目のコースが実施されます。

タイ人には伝統的ヨーガへの強い親和性があるのですが、別な意味で、韓国人にも伝統的ヨーガへの志向性があるようです。ヨーガで接する韓国の友人からは、「自分の人生に向き合う」というストレートな真剣さを感じます。そういった真摯な志向性が韓国組を伝統的ヨーガに駆り立てるようです。

もちろん、日本人には日本人としての「伝統的ヨーガ」に対する
親和性があるように思えます。ただ、それがより具体的な形を取って行くには、ロナウラで勉強する日本組が増え、ロナウラに蓄積されている伝統的ヨーガのリソースが日本にも紹介され、消化されて行くことが必要であり、最短コースになると思われます。

少なくとも、日本組も韓国組と同じように、『カイヴァリヤダーマ』で別枠で日本人向け4週間コースを組める体制くらいは必要と思います。


3)8月・9月のタイでの合宿セミナー

これもお知らせしていますが、8月と9月に次の日程で日本の方を対象とした、恒例のバンコク郊外のリトリート・センターでの『タイ・ヨーガ研究所』企画のヨーガ合宿セミナーが予定されています。

○8月15日(土)・19日(水)_4泊5日:『ワンサニット・アシュラム』
○9月19日(土)・23日(水)_4泊5日:『パナ・ソム』

興味のある方は、どうぞお問い合わせ下さい。
南国のタイ環境での、有益で、有意義なヨーガの学習体験となると思います。

また、11月に『ワンサニット・アシュラム』で予定されている10日間の専門コースの方は、すでに定員に達しています(「空席待」の予約はお受けします)。



(この項続く)

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