2011年8月3日水曜日

バンコクの近況2011(1)

Sawasdee kha !
皆さん、こんにちは。

8月に入りましたが、いかがお過ごしでしょうか?

7月は、日本は台風の接近・上陸で、早い梅雨明けで始まった猛暑がひとまず治まったり、また猛暑が戻ったり、気温の上下がありましたね。

こちらバンコクも、7月第1週2週目は、雨も降らず暑かったのですが、3週目から雲もくもくと出て来て、時折激しいスコール雨も来るようになり、涼しい風が通るようになりました。

もちろん、日が差すと蒸し暑いのは南国です。こちらでは普通の状態でしょう!

7月1日から始まった、今年度のシーナカリンヴィロード大学(SWU)でのヨーガ講座も1ヶ月を経過。順調に進んでいます。

変動の現代社会にあって、健康と精神性の向上に、ますます真剣なタイの受講生のみなさんと、ヨーガでの楽しい日々が続いています。

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●「バンコクの近況2011」のウエブアルバム

ウエブアルバムのPicasa上に、バンコクの近況の写真を集めたアルバムが作成されています。どうぞ、ご覧下さい。
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1)「SWUコース2011」進行中です

昨年は、かなり深刻化したタイの政治情勢の混乱から、SWUコースも影響を受け、変則的な運営となっていました。

夜間の外出がどうなるか、不確実だったので、平日の夜のクラスは設けずに、週末に集中するパターンでコースは運営されました。

しかし、今年は平年通り、週4回のクラスで、平日月・水・木の夕方午後5時半から8時までの2時間半と、土曜日が午前8時から午後1時までの5時間となっています。

タイでは7月3日(日)の総選挙が無事実施されたことで、政治情勢も安定期に入っています。悦ばしいことです。

今年度のタイ側の共同チームは3名、今年はうちのオフィス「タイ・ヨーガ研究所」のディレクターのカヴィー先生も通訳を兼ねた共同チームの講師陣に加わっています。

講義のトピックは、その日の担当者によって変わります。

一番経験の浅いラットさんとは、一般的なトピック、熟練のオッドさんとは、ヨーガ・スートラを仏教的視点から膨らませた講義。

ディレクターのカヴィー先生とは、ロナウラの特徴である伝統的なリソースに近代的解釈を融合させたヨーガ総論から始まり、後半に向けては、「ハタ・プラディーピカー」をベースに、からだに働きかける技法がこころに作用するメカニズムについて考察を深める、という方針です。

そこまで踏み込むのは、わたしたちにも初めてのチャレンジです。

年々、受講生のレベルは上がって来ているのですが、今年は特にシリアスな方が多いです。

そういうクラスの雰囲気と期待の高さが、わたしたちにとっても、先へと進むモチベーションとなっています。

近年、バンコクでも街中では無責任な「商業ヨーガ」「フィットネス・ヨーガ」が蔓延っています。

そういったスタジオが、初めてヨーガに接する機会だった人たちも、しばらくすると、何かおかしい、と疑問を持って、シーナカリンヴィロード大学のヨーガ講座の受講を決める、という例が多くなりました。

特に、「ヨーガはスピリチュアル」というような思わせぶりな宣伝文句で生徒を勧誘しているのに、実際は無茶な体操ばかり強いられる、というスタジオのあり方に不信感を持つようです。

大学のヨーガ講座では実践面と理論面が一体化して進みますので、みなさんも納得のようです。



2)今年度の受講生の傾向

では、今年の受講生の簡単な紹介をしたいと思います。

当初27名の受講生でしたが、1名抜けて26名となりました。

うちのオフィスの短期コース(4泊5日+3泊4日の組み合わせ)に参加して満足したので、次は大学の長いコースで勉強したい!と、動機は高かったのですが、腎臓疾患をお持ちで、病状が悪化し、今月に入って入院されたのです。

アメリカにも留学されて、研究者として活躍されていた方と聞きましたが、すでに腎臓透析が必要な段階でした。

瞑想に興味が深く、ヨーガにも関心が高かったと聞いています。一日も早い回復をお祈りしています。

それで、受講生は26名。女性は25人、男性は1人。
平均年齢は、39.88歳。
既婚者8名、シングル18名です。

主力は、いわゆる、高学歴・キャリアー系のアラサー・アラフォーの女性、という、例年並みの傾向です。

女性優位は例年のことですが、例年男性も数名はいるところ、今年はSKさんという中年の方ひとりだけです。

しかし、このSKさんがとても熱心で、講義の時は一番前に出てきて、熱気を一人で盛り上げています。男性1人ながら、3名分くらいの存在感があります。


TFさん(女性:32歳)

貿易関係の家族経営の会社勤務。

ヨーガは母親の薦めで始めて10年。いろいろフィットネスのスタジオに行ったけど、ただのエクササイズに納得できずにいたところ、うちの「タイ・ヨーガ研究所」のウエブサイトを見て、今回の申し込みを決める。

母親は、7年前、彼女が25歳の時にガンで死亡。母方の祖母もガン。伯父もガン患者で、彼女もガン系の体質が疑われ、本人も不安に思っているので、病院からは定期検診を薦められています。

子供の頃からお寺に通い、今年初めに100歳近い高齢で亡くなられ、こちらの仏教の最高の境地であるアラハン(阿羅漢)に達していた、と考えられている高僧マハー・ブア僧正の信奉者でした。

彼女の自宅はうちのオフィスに近いので、月・水の夜の帰りは、彼女の車で送ってもらっています。

帰りの車の中で、トフィーさんから質問責めに合います。ヨーガについて、誰もが持つような素朴な疑問がどんどん出て来るので、わたしたちも微笑ましく思いながら、たいへん参考になっています。


BMさん(女性:42歳)

麻酔医。病院勤務。

例年、医療関係の受講生が数名います。医師・歯科医・看護師・薬剤師・タイ伝統医療の治療師の方などです。

ブームさんは麻酔医で病院勤務。ヨーガに興味があり、今回参加しました。膝に少し問題があるようですが、クッションを使って正座は出来る程度です。

麻酔医の方は、手術室で緊張感を維持して立ちっぱなしなのか、膝に負担があるのでしょうか。

時々来る質問が興味深いです。例えば、ムーラ・バンダの感覚がよくわからない、と。

どうも、ムーラ・バンダで、どこを収縮させるのか、いろいろ考えすぎるようです!

からだの構造に精通している医療関係者の方も、実際に、自分のからだの内面の感覚と知識を結びつけるには、ある程度のトレーニングが必要のようです。


SKさん(男性:48歳)

今回だだ1人の男性受講生です。25名の女性陣のクラスの中で、存在感を出しておられます。

家族経営の会社で、やはり貿易関係の仕事をされて来ましたが、最近は徐々に仕事から離れて、瞑想とダンマ(仏教)への傾倒を深めておられるそうです。

タイ・ヨーガ研究所の短期コース(4泊5日の合宿、そして1ヶ月後に3泊4日の合宿)を修了。そして、この大学の長期コースに進んで来られました。

タイでは、40歳を過ぎたら、だんだん瞑想とダンマ(仏教)に近づいて行く、という考え方があります。

人生の諸問題は、最終的に瞑想で解決される、というのがタイの人たちの考え方です。

サクさんも、40歳を過ぎてから、熱心に瞑想を学ぶようになり、その関連でヨーガにも興味を持たれたようです。

それで、ヨーガの背景となるインド思想や哲学に大変興味があって、サクさんからは、いろいろな質問がメールでも送られて来ます。

そして、今から来年1月にうちのオフィスで企画されている「インド・スタディー・ツアー」でインドに行く気満々です!


BBさん(女性:54歳)

だだ1人の男性のSKさんのお姉さんです。

弟のSKさんと家族経営の会社運営。こちらの中小企業は、たいてい家族経営で、一族でビジネスをやっています。

こちらには相続税がないので、一族の結束は強いですね。世代が変っても、一族の資産が税金で減らないから、資本を集中しやすい環境ですし、信じられるのは血の繋がりだけ、という風土もあります。

お姉さんのBBさんは弟のSKさんに薦められこのコースに参加。

どうやら、年齢相応のからだの不調があり、ヨーガに興味を持たれたようです。

弟さんと比べると、講義の方は今ひとつのようですが、毎回、熱心に出席されています。


KRさん(女性:51歳)

シヴァーナンダ系のヨーガ教師。

タイに初めてヨーガを紹介されたのは、1960年代にインド・リシケーシュの「シヴァーナンダ・アシュラム」に2・3年滞在してヨーガを習って来たタイ人のチョッド先生という方です。

わたしたちがタイに来た1998年当時は、タイでヨーガと言えば、そのチョッド先生の系列のものだけでした。アメリカから今風のフィットネス・ヨーガが来たのは、2003年頃からです。

チョッド先生という方は、古風で人徳の高い方だったようで、個人指導だけをされ、謝礼もドネーション制だったようです。

チョッド先生の存在のおかげで、ヨーガは真面目なものだ、という認識が当時のタイ社会に出来たようです。

チョッド先生が亡くなられてからは、義理の娘さんが活動を継承されています。

2006年のうちのオフィス主催の「第2回インド・スタディー・ツアー」にはチョッド先生の義理の娘さんも参加されて、カイヴァリヤダーマ研究所の
カンフェレンスに参加されました。

KRさんも、そのチョッド先生系のヨーガ教師です。スクンヴィット通りでヨーガ・スタジオされています。以前も、別なチョッド先生系のヨーガの先生たちも、うちの講座に参加されたことがあります。

KRさんのアーサナは、さすがに、一番安定して、良く整っています。ただ、呼吸の扱い方が曖昧なようです。

また、まだ未知と思われるムドラー・バンダや、正式なプラーナーヤーマの技法などは、講義室にビデオ・カメラを持ち込まれて、熱心に撮影されています。

チョッド先生系のヨーガの先生たちは、1960年代にチョッド先生がリシケーシュで学んて来たことしか知らないので、アップデートの必要性を感じて
おられるようですね。


NYさん(女性:30歳)

NYさんは、3年前にこのSWUコースをお母さんと一緒に受講されました。今回2回目です。

軽い統合失調症があるようで、大学を出て、英語も話すインテリですが、時折幻聴があったり、気分が鬱に振れるようです。

本人が言うには、「前回は母親に連れてこられての参加で、興味は今ひとつでしたが、今回は自分の希望で参加しました!」。

3年前よりふつうに見えます。家の仕事の手伝いをされているようです。自分で車を運転して大学まで通って来ています。

NYさんからは、ふつうの人からは出ない質問も来ます。内面の感覚に敏感なようです。

あまり特定な感覚に囚われないように、リラックスして、心を落ち着けて、毎日少しずつ練習を続けるように、とアドバイスをしています。

ヨーガで、無理なく全体の統合レベルを上げる習慣を持続することは、彼女に役立つ立つことに思えます。

3年前のわたしたちの観察では、お母さんの方は、タイ人の中では、かなり神経質な方のように見受けられました。

毎回、クラスに来られると、ご自分のヨーガ・マットを敷く床の部分を、ティッシュペーパーで、ていねいに、ていねいに拭いておられました。

あまり、親子関係や環境に左右されず、大人になったら、自分で自分の解決を見つけて行くという心構えは大切と思います。

そのトレーニングとしても、ヨーガは大いに役に立つと考えます。


PLさん(女性:28歳)

スチュワーデスさん。

今まで、バンコクで看板を上げている「アブソリュート・ヨーガ」「アルティメイト・ヨーガ」などと称する商業ヨーガ・スタジオに通ったことがあるのですが、頭痛が出たりして、かえって体調が悪くなる始末。

スッチーさんとかの職種は、そういうスタジオ・ヨーガ商売さんのターゲット・グループのようですね。

やはり、うちのオフィスのウエブ・サイトを見て、まじめそうなコース、ということで、今回参加を決めました。


YYさん(女性:30歳)

製薬会社勤務の薬剤師。

今月一杯で会社を辞めて、マヒドン大学の大学院の精神文化系の専攻に進学されます。

YYさんは、昨年度の受講生のマヒドン大学の同専攻の大学院生の紹介でこのヨーガ講座に来ました。

7月中はまだ会社での引き継ぎがあって、遅れてクラスに飛び込んで来られてましたが、8月からはフリーのようです。

バンコクは成熟した大都会です。近年、有名国立大学の大学院で、社会人対象の多彩な修士課程が開講されています。

ちょっと立ち止まって、自分の人生を考え直すときに、ある期間、大学・大学院に籍を置く、というのは、現代的なアプローチですね。

バンコクも、それが可能な場所です。うちのヨーガ関係の周辺にも、そういうケースが多いです。
 
 

3)タイで成立する精神文化としてのヨーガ

ここで紹介した受講生のみなさんの他にも、例年と同じく、瞑想をやっている人が大半です。

今年は、瞑想の指導者になるコースを受講中の方もいます。

また、うちの講座修了後は、お寺でヨーガのクラスをすることが決まっている方もいます。

ただ健康に興味があるだけでは、哲学宗教学科のヨーガ講座には来ないですね。

このように、瞑想と仏教(ダンマ)に関心の強いタイ社会の環境は、ヨーガをやっていく上でも、とても有利な条件であることを、いつも感じています。

上座部仏教国のタイでは、仏教的な考え方や生き方が社会に深く根ざしているので、ヨーガの背景にあるインド思想に触れても、タイの人たちには、それが何を意味するのか、「判断する基準を持っている」「正しく考えることが出来る」ようです。

タイでは、精神文化としてのヨーガが成立する土壌がある、と言うことですね、、、、

タイの仏教文化でのヨーガの価値がよく分かる人が増えているので、今回も、自分のヨーガの先生(以前の講座の修了生)が受講料を払ってくれて、大学の講座に勉強に来ている方もいます。

さて、それに比べると、日本の現代社会にはタイのような仏教や精神性の核が薄いので、日本の人は、どうも、インドの宗教家を盲信したり、インドの精神文化を鵜呑みにする傾向があるように思われます。

日本側に適切な判断基準を持っていないと、自分が求めるものに向かうのに、相当な遠回りをしたり、また、思い込みだけで、どっぷりとインドに浸り込んでしまい、人生を棒に振ってしまう?!ということにもなりかねないですね!!

もちろん、わたしたち日本人にも良い面がたくさんあります。

今回の3月11日の大震災で、日本人の行動原理や社会慣習の良い面が、広く世界に報道されました。

確かに犠牲者の方は少なくありませんでしたが、起きたことは起きたことで、それ以上状況を悪化させないように、思慮深く自制する日本人の姿を、ある意味、今回ほど誇らしく思ったことはありません!

そのよい面を強化するためにも、ヨーガという習慣を身に付けて行く事は、大変有益なことと思います。

よく知らない・よくわからない、ということが、自分を不自由にしているルーツにあるならば、よく知って、よくわかることでしか、自由にはなれない、
ですね。

確実で、どこから見ても納得できる知識を積み上げて行くしか、先に進めないのは、どの分野でも同じでしょう。

ヨーガに関してもそうで、ヨーガは、ヨーガそのものの知識を地味に積み上げることでしか、ヨーガの問題は解決しないですね。

あいまいな資格や、直接ヨーガと関係ないものをいくら寄せ集めても、ヨーガへの疑問は解消しないです。

自分の回りに、信頼に足る、正しい情報がやって来る環境を作って行く心掛けが、大切と思います。

そのためには、ご都合が付く方は、タイに来られて、タイの仏教文化とヨーガについての見聞を広められることも、役立つことでしょう。


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