2009年4月30日木曜日

インドで自然療法2009(続)

「S.T.」さんの「インド短期留学2009」シリーズ・自然療法編

1月13日から3月23日までの70日間、インドに短期留学に来られた東京在住の「S.T.」さんの、「自然療法編」のフィードバックです。

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「S.T.」さんは次の3つの研修プログラムを、無事消化されました。
・ロナウラの『カイヴァリヤダーマ研究所』6週間コース
・ウルリカンチャンの『自然療法アシュラム』10日間コース
・イガットプリの『ヴィパッサナ瞑想』10日間コース

マハーラーシュトラ州のロナウラ/ウルリカンチャン/イガットプリは、強烈なトライアングルを形成し、それぞれが密接に関連し合っています。

この3つのプログラムの組み合わせによる「インド短期留学コース(学生ビザ)」は、非常に効率良く、一貫したテーマの「インド研修」を可能にします。


「ヨーガと自然療法」

どんなに優れていて、国民みんなに役立つものであっても、一般社会に正当に認知され、健全で永続的な社会貢献をして行くためには、政府による法的な保護と規制が必要です。

現在のインド中央政府厚生省の医療政策では、ヨーガを病気の治療に応用する場合は、「自然療法(Naturopathy)」の範疇で取り扱われることが基本方針となっています。

自然療法は、医薬品や高度な医療技術を一切用いずに、患者さん個人の自己治癒力に依存して病気を治癒させる医療体系です。

そして、自己治癒力を発現させる手段のひとつとして、ヨーガも自然療法の治療体系に統合されています。

また、自然療法では「自然に病気が消滅する」というアプローチを取りますので、病気を解消し健康を回復するためには、患者参加型の専門施設に中・長期間滞在し、専門医の指導を受けながら自己治療活動に専念することが前提条件となります。

インドでは自然療法のアシュラムや専門病院が多数存在しています。また、自然療法医(Bachelor Degree of Naturopathy & Yogic Science/BNYS)が5年半の医学教育のレベルで養成されています。

「ヨーガ・セラピー/療法」は単独では成立しない、というのはインドの常識です。実際にインドの現場を見ることで、そのことは良く分かります。



『ニサルゴプチャール・アシュラム(自然療法アシュラム)』の
フィードバック (S.T.さん、東京在住)
  

「S.T.」さんにも『自然療法アシュラム』については次の4ポイントで
フィードバックをお願いしました。

1)場所と環境
(ウルリカンチャンの環境、アシュラムの施設)

2)泊まる部屋と食事
(ゲスト・ルームの設備とダイニング・ホールの雰囲気)

3)アシュラムのプログラムについて
①自然療法医のガイダンス
②アシュラムで提供されているプログラム
③食事療法(ダイエット)のガイドライン
④ご自分の健康について考えるのに有益だった部分
⑤今後ウルリカンチャンを訪問される方へのアドバイス

4)インド全般の印象・異文化体験、今後期待されるプログラムetc.  


1)場所と環境
(ウルリカンチャンの環境、アシュラムの施設)

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門をくぐると大きな中庭があり、芝生と草木、花々に囲まれたちょうどよいウォーキングコースがあります。肥満のインド人に囲まれながら、わたしもぐるぐる歩きました。 

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その脇には、フルーツショップがあり(小さい市場みたい)。
ドクターから処方されたフルーツなどはここで買い求めます。パパイヤがこんなに美味しいものだとは・・・初めて知りました。

今や日本では高価なフルーツとなった「ざくろ」がなんと
1個20ルピー(40円)。下痢のときには効果的といわれ体調をくずしてから(疲れがどっと出た)、毎日食べました。美味しかったです! 

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図書館もあります。滞在中は、プログラム的に時間の余裕があり、頻繁に利用しているインド人が結構いました。朝はアーサナホール(シニア向け)としても使われるようで、雰囲気がよいです。



2)泊まる部屋と食事
(ゲスト・ルームの設備とダイニング・ホールの雰囲気)
 

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1泊300Rs(約600円)の部屋で、バストイレつき、安くて清潔、問題ナシです。

ただし、もっと安い150Rs前後の部屋(バストイレ共同、窓なし。寮みたい?)もあり、多くのインド人はそちらに滞在していました。 

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写真は、多くの患者が処方される「キャロット・ジュース」。大変濃厚で、何度も飲みました。わたしの場合、医者の処方がほかの柑橘系のジュースと混ぜてもOKで助かりました。

食堂の食事は、素材はいいのでしょうが、味付けがうすいです。滞在に慣れてくると、必要以上のものを摂りたくなくなるので
少食になる傾向があります。

肥満解消のために来ている人がほとんどですので、食堂でたっぷりご飯を食べている人はほとんどいませんでした。
フルーツ断食(フルーツしか食べない)・・・なんて人も、よく見かけます。


3)アシュラムのプログラムについて

①自然療法医のガイダンス 

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写真はドクターです。あくまで体本来の自然治癒力を使うため、体調が悪くなったときも、薬は処方せず、「××は食べちゃだめ」「今日から〇〇食べてよし」というアドバイスが主でした。

毎日、自由に通えるため、体調の変化はすぐ報告できます。しかし、いつ部屋にいるかは不明なので、会えたらラッキーです。
奥様はとなりの部屋のドクターでした。


②アシュラムで提供されているプログラム 

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写真が各トリートメントの待合室。脇には「マッサージルーム」「浣腸ルーム」「バスルーム(いろいろなタイプあり)」「サウナルーム」と小部屋がイッパイ。午前と午後のトリートメント時間は、何十人も行列になります。 

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「スチーム・トリートメント」は、掃除機のような排出口を痛い部位に向けて、スチームを放出。距離感が非常に大事で、一歩間違うと泣けるほど熱い!腰や足首など、やったあとはホントにスッキリ軽くなるから驚きです。 

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ヒップバス。いわゆる腰湯です(15分)。お湯の人もいれば、水の人もいたりと、医者の処方はさまざま。ほかには「背骨バス」があり、あお向け状態で、背骨の直線だけ集中してシャワーがあたるものもありました(15分)。

これらのバスは、じっくり10日以上かけると効果を感じられるものかと思います。 

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木箱のスチームサウナ。頭だけ出して、あとはアッツアツのサウナが全身を包みます。熱くなりすぎると、内側から足で蹴って扉をあけ蒸気を飛ばせます。サウナが苦手なわたしは、すこ~しずつスキマを広げ、規定の時間をのりきりました(10分ほど)。 

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毎日楽しく行ったのが、泥パックです。胃腸のムダな熱をとり、機能を正常に戻すのが目的です。暑いインドでは消化器系が熱を持ちやすく、それによって食欲のコントロールが乱れるようです。泥で汚れないよう、パンツに新聞をはさみ、日光浴とともに20分ほど。 

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屋上で、海辺のトドのごとく、デーンと寝転がっています。絶景です。ここではインド人とのトークが盛り上がります。 

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泥がこんなに心地よく冷やすものとは予想外でした。もっとも、きちんと泥の管理をしているらしく、敷地内では、泥作成の施設もありました。プロのマダムが水分と練りの調節を行っています。 

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なんと泥パックは昼寝の時間も大活躍。午後のけだるい時間、各部屋に、泥のアイパック(目を冷やすもの)が配布されます。
(泥に浸された雑巾が丸まったようなもの)ティッシュやタオルにつつんで(衛生的にそのままはマズイ…)目に上におきながら寝ると、数分後はパッチリお目めで目覚められます。


②食事療法(ダイエット)のガイドライン

医者は初日の診断で、毎日の食事を処方します。その中で、わたしが注目したのは「ジュース」です。わたしに限らず、どの人でも共通して間食に「ジュースの摂取」が多くありました。野菜もフルーツも。

どうやら消化をラクにするためで、今まであまり意識しなかったのですが、噛んで食べるよりも、はるかにジュースのほうが
胃の負担が軽い、ということが実感できました(このアシュラムにいると、体に入るものにかなり敏感になります)。

おかげで、体はいつも非常に身軽でした。食後、よく体にだるさを感じていた消化器系の弱い私は「これはすばらしい!」と思い、今後、ミキサーを利用した「ジュースで摂取」は継続させたいと思いました。

食事療法全体を通じて感じたのは、
①必要以上の量を摂取しないこと(摂取量はグラムで指定されました)
②摂取の仕方を適切にすること(ジュースにしたり、一度に摂らずに配分をしたり)
です。

日本ではカロリー計算や、栄養素のバランスなど、食べるものの中身をあれこれ注目しますが、こちらでは、摂り方、つまり生き方的なところを重視するように思えます。

生活規範がしっかりすれば、自分の体に敏感になり、自ずと自分に適した食べ物を選べる感覚が身につく。考えの優先順位がハッキリしているように思われます。


④ご自分の健康について考えるのに有益だった部分

全身マッサージが毎日あるのには驚きました(20分程度)。マッサージ料金が高い日本ではそれほど日課にできるものではありません。こうして毎日やっていると、マッサージの技術がそれほど高くなかったとしても、歯磨き同様、やらないと落ちつかなくなります。

「体のトータルに感じる」という点ではほかのどんなトリートメントより、明確で具体的です。他人にやってもらえなくても、習慣的に自分でも触ってみる、というのは案外ありだと思いました。それも一部分ではなく、「体のあちこち」を触る。手を意識的に使う、ダイレクトに刺激を感じられる、という点で「体をケアしている」という意識が、非常に高まるのが感じられます。

こうした意識の高まりが、結局は体の生体リズムを活性化させ、自律コントロールを高めていく。体へのアプローチとして、マッサージは続けていきたい、と思いました。

⑤今後ウルリカンチャンを訪問される方へのアドバイス

滞在は1週間以上がおすすめです。体に対する意識の変化を味わえるだけの、十分な時間があるといいですね!



4)インド全般の印象・異文化体験、今後期待されるプログラムetc.

今回の滞在では、「初めてのインド訪問が、この自然療法研修だった」という日本人の方とご一緒できました。そして彼女は、大変楽しいインドとの出会いを果たされて、帰国されました。

これはとってもおもしろいことだと思いました。インドを初体験する人々を見たとき、ほかの国と比べて、一種の“過剰さ”を感じることがあります。極端に好きになったり、嫌いになったり…。必要以上にインドを特別なものと思う傾向があるように思えます(もともとインドの磁場のせいでもあるのでしょう。私自身そうでした)。

バックパッカーやツーリストは、街でよく見かける生死がむき出しの貧困や人間のたくましさにのみ一喜一憂して、ヨーガやインド哲学の愛好家は限られた修行地だけで社会性のない底無しの神秘さにはまっていくケースもちらほら・・・

しかし、自然療法を入り口として入ったとき、なにか、その極端さが薄れ、とてもバランスのよい充実した体験ができているように思えました。

自然療法はインド独自ではありますが、極めて一般的、普遍的な考えを持つ、万国に受け入れられる理念、技法です。

そして、これを体験する限り、単なる旅行とは違う、具体的で確かな学びがあります。インド人との出会いも、健康をテーマに幅広く交流できます。

なんの専門性を持たない人でも、インドの独自性を十分満喫できますし、専門性があったとしたら、それを土台にしてさらにインドの伝統的な考え方を深めることができる。なんといい入り口なのでしょう!(しかもほかの観光地に行くより、ダンゼン安い!)

もっとも、自然療法はガイドブックにものっていない施設です。ここに来る日本人は、ほぼ相方先生の紹介がからんでいると思われます。インドに詳しい相方先生だからこそ、日本人への紹介が可能になった施設とも言えます。本当に、感謝します。
今後、自然療法をきっかけに、充実したインドとの出会いを果たされる方が増えることを期待しております。

わたし自身、さらに自然療法から人間観の学びを深めたく思います。
以上。

 

 

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